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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】1 さくらぱんcolor

揺らめく常夜灯の灯りが、影を作る
まだ夜が明けない。
長い夜。

スヤスヤと眠る夕鈴の寝台に、複数の黒い 影…
音もさせずに忍び寄って影は、
この国の国王の唯一無二の花に近づいた。

……っ!

「なっ!……だ…誰かっ!」

夕鈴の短いSOSの声は、濃い闇に掻き消された!

これからはじまる長い夜…
夕鈴と黎翔の夜は明けない。

手ががりを何も残さないまま…

その日から、忽然と後宮から夕鈴が消えた……
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】2 さきcolor

―――目を開くと、そこは見慣れた天井だった。

「―――え?ここは…」
「気が付いたか」

聞きなれた声が聞こえ、夕鈴は勢いよくそちらを向いた。

「―――几鍔っ!」
「手荒なことをして、悪かったな」

それは珍しく、幼馴染の金貸しの謝罪だった。

「あ、あんたどういうつもりっ?!これは一体…!」
「―――それはこちらの台詞だと思うが?」
「な…!」

突然の事態に、夕鈴はすぐさま几鍔に説明を求める。
しかし、几鍔は無表情に続けた。

「―――まさか、お前があの『冷酷非情の狼陛下の妃』…とはな」

幼馴染の言葉に、夕鈴は頭が真っ白になった。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】3 さくらぱんcolor

回らない頭で、必死に今の状況を確認する…

「ここ…私の部屋だよね……」

「なんで…ここに……」

「どうして、狼陛下の妃が私だって分かったの?」

「どうして、連れ出したの?」

「どうして…几鍔?」

「陛下が、心配してるわ」

「私は、後宮に帰らないと…」

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】4 さきcolor

矢継ぎ早に説明を求める夕鈴に、几鍔は淹れてあったお茶を渡した。

「―――俺だって、まさかあそこにお前が居るとは…想像もしてなかったさ」

几鍔にお茶を渡された夕鈴は、喉も乾いていたのでそれを一気に飲み干す。

「…聞いても良い?」
「ああ」
「……何で、あんたがあそこに居たの?」
「その台詞、そっくりそのままお前に返す」
「――っ」

夕鈴は肩をビクリと揺らした。
そんな夕鈴に、容赦なく几鍔は問い詰める。

「―――お前、何であそこに居たんだ?俺は…俺たちは、狼陛下の妃を連れて来る予定……だったんだ」
「な―――!?ど、どういうこと―――?!」

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】5 よゆままcolor

「頼まれたんだよ!!!」

目の前の几鍔は悪びれずに言い放つ。

「頼まれたって・・・・誰によっっ」

夕鈴も負けじと言いかえす。

「お前には関係ねぇんだよ!!」
「関係ないわけないじゃない!!!だって、私は強引に連れ去られたわけだし。」
「じゃあ、説明しろよ!!オレが納得いくように!!!なんでお前があんなところにいたんだよ!!」
「・・・・。」

夕鈴はうまい言い訳を考えて黙り込む。

「やっぱり・・・お前・・・。」
「ちっ、違うわよ!!!」
「どう違うんだよ!!!」
「・・・・・・それはね・・・・・えっ~~と、、、、、そっ、そうよ。あれは仕事なの!!」
「仕事????あの狼陛下のお妃をすることがか??」
「違う!!
あれはね・・・・ホントのお妃様はちゃんといるのよ。でもいつも危ない目に合うから、交代でお妃様のふりをして、お妃様の部屋で寝るようになってるの!!
それで偶々私の番だったのよ!!」
「・・・・・・・・・。」

本当にそんなことがあるのかと几鍔はいぶかしむ。
そして疑いの目・・・そう、片目が夕鈴を見詰めていた。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】6 さくらぱんcolor

「几鍔さん、姉さん起きたんですか!?」

「……あっ!青慎!」

「姉さん、大丈夫?昨夜、几鍔さんに担ぎ込まれて帰ってきた時はびっくりしたよ」

「流行り病なんだって?大人しく休んでいてね……」

…は?

「ずっと、お休みなしで、お仕事だったから、疲れたんだね。」

「何も心配いらないから、ゆっくり休んでね、姉さん。」

(ちょっとぉ几鍔…青慎に、何て説明したのよ!)

(ばぁか、お前ホントのこと、言える訳ねぇだろ…)

(…それも、そうね。)

「青慎、コイツは、目覚めたばかりで、状況が分かってない。」

「俺は、もう帰るが、あんまり出歩かせるなよ!流行り病がコイツから移っちまうからな!」

「はい、几鍔さん!」

「姉さんを連れてきてくれて、ありがとうございました。」

「ちょっと、几鍔!まだ話の途中っ!」

「俺は、無い!
俺も、混乱してるんだ!
夕鈴、また来る!」

「青慎頼んだぞ!」

テーマ : 二次創作:小説
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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】7 さきcolor

下町の大路を、几鍔は歩いていた。
すると、わき道から手招きする男が。
几鍔はそれに従い、すぐに路地裏へと足を運ぶ。
男が口を開いた。

「―――おい、几鍔。どういうことだ?…あの女は、狼陛下の妃じゃないのか?」
「…」
「…おいっ」
「騒ぐな、聞こえる。―――俺にも分かんねーよ。分かっているのは…―――あいつは、俺の幼馴染だってことだ」
「―――」

男と几鍔。
二人の密談は、誰に知られることなく続いた。


********

「姉さん、気分はどう?変なところとか無い?」
「大丈夫よ…心配しないで、青慎」

寝台から降りた夕鈴は、几鍔から受け取ったお茶では足りないと感じ、自分でもお茶を入れた。
後宮の茶葉とは違い安物だが、飲み慣れた下町の味なので、知らず力んでいたいた肩から力が抜ける。

「―――本当に、大丈夫なの?姉さん」
「…な、何が…?」

青慎は事情を知らないはずなのに…と、夕鈴は最初思ったが、そういえば几鍔が流行り病に罹ったと嘘を吐いたのだったっけと思い直し、安心させるように笑顔で言う。

「――大丈夫よ。ちょっと休めばすぐに良くなるわ」
「そう…それなら良いんだけど…――あ、でも、今日はゆっくり休んでね。家のことは、僕と父さんに任せて」
「…青慎になら任せられるけど、父さんは…」

途端に渋面になった姉に、本当に何でもないのだと思った青慎は、安心してその場を離れることにした。


―――嵐の前の束の間の静けさであることは、この時二人は知る由もなかった…


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】8 さくらぱんcolor

「――――っ!!」

ガシャーーン

黎翔がいらだち混じりに薙ぎ払った剣は、壁際の花瓶を真っ二つに割った。

剣呑な紅い瞳。


「妃の行方について、何か掴んだかっ!!!」


大事なものを奪われた手負いの狼の傷は癒えない。

夕鈴の行方につながる
手がかりが何もないまま、時だけが過ぎる・・・・

なぜ、手がかりが掴めない。
――――よほどのてだれなのか?

なぜ夕鈴を攫った・・・

日を追うごとに、荒れ狂い、荒む王に、誰も慰めの言葉をかけることができない。

たった一人の花が居なくなっただけで、誰がこれだけ王が荒むなど予想しただろうか?

狼陛下の妃が、攫われたなどという醜聞は秘された。

秘密裏に、速やかに夕鈴妃を探す部隊が組まれた。

近隣諸国に、隠密が放たれる。

少しでも、なにか手がかりが掴めないものかと策が、巡らされた。

誰一人、当の夕鈴妃が自国の下町に居る等ということを想定せず、他国を探したのである。






テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】9 さくらぱんcolor

「お妃ちゃん、大丈夫かなぁ…」

「本当に掃除娘の行き先の手がかりはないのか?」

「じっちゃん、俺も責任感じて捜してるんだよ…とっころが、ホントに手掛かりがねぇ…」

「犯行声明でも、ありゃ…いっそ楽なのに…」

「それさえも、ねぇ……」

「お陰で、陛下が荒む、荒む……」

「毎日の報告が、命がけだけどよ」

「あの人(陛下)も責任感じてんじゃぬぇかな。
俺らが、酒盛りしてて、お妃ちゃんを守れなかったってさ。」

「浩大、頼むぞ…
儂は、陛下の為に何もできぬ。」

「分かってるって、じっちゃん。
絶対に、お妃ちゃんを無事に探し出してくるよ!」

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】10  さきcolor

「―――陛下は…どうしているかしら…」

あれから、監視の日々が始まった。
毎日毎日、飽きもせず几鍔はうちにやってくる。

あの出来事の翌日、気になって王宮に戻ろうとした夕鈴だったが、すぐに几鍔とその子分たちに囲まれて阻まれた。
子分達は「姐さんっ!姐さんをこき使う王宮になんざ、戻っちゃいけねぇ!」とかなんとか言われて行く手を阻まれた。
その時几鍔を睨んでみたけど、几鍔はふいと別の方角へと視線を逸らした。
そのまま強行突破するのは流石に骨が折れるので、夜まで待って自分の家の裏庭をぶらぶらしてみた。
王宮からの監視者か誰か、近づいてこないかと思ったから。
…でも、夜が更けても、誰も来なかった。

「―――おかしい…――おかしいわ」

後宮から妃が忽然と消えて、騒ぎにならないわけがない。
なのに、王宮からは無しの礫。
通常いつの間にか下町に来ている陛下も、今回は音沙汰ない。
―――おかしすぎる。
まさか、突然失踪した妃のことなど、どうでも良くなったのだろうか。
消えた妃の捜索に回すくらいなら、仕事を優先しようと思ったのかしら。
考えれば考えるだけ、思考は悪い方向へと進んでいく。

「――いや、有り得ないわ」

何より、私はまだ借金が残っている身。
李順さんが借金の事を放置して、私を放置するとも思えない。
例え私が逃げ出したとしても、どこまでも李順さんに場所を突き止められて借用書が届けられそうな気がするもの。

「――うん、絶対あり得ないわ」

だとしたら…

「――もしかして、下町に居ると、知らない…?」

それなら合点がいく。
ならばと王宮に戻りたいと思っても、几鍔達が行く手を阻む。
八方塞がりだ。どうしようもない。

「…とにかく、几鍔達を何とかしないと…」

夕鈴は考え始める。
この状況を、打破するために。


********************

「―――夕鈴は見つかったか?」
「それがねぇ…―――国を出た妙な集団は居ないし、貿易の関係で国を出入りしている商隊の中に、お妃ちゃんらしき女も居ない」
「―――」

黎翔は夕鈴が攫われた夜のことを考える。
後宮の警備を掻い潜って妃の元へ行き、人知れず妃を連れ出すなど、内部に熟知している者でなければ不可能だ。
ならば少なくとも、後宮にて手引きした内部犯は、王宮か後宮に関係のある人物だ。

「―――もう少し、内部の調査にも人手を割くか」
「は。―――ところで、陛下」
「何だ」

李順は言って良いものか逡巡したものの、やはり不可解な点を見過ごすことは出来ないので、黎翔に告げる。

「夕鈴殿は…もしや連れ去られたのではなく、自ら出て行かれたのではないのですか?」
「―――何?」
「いくら手際の良い者でも、我が国の優秀な隠密の目を掻い潜って後宮に侵入し夕鈴殿を攫うなど…難しいのではないかと」
「…」
「ならば、夕鈴殿が自ら出て行かれた、と…」
「それはない」

黎翔ははっきりと答える。
李順も、決して本気で言っているわけではない。
あくまで、可能性の一つとして告げているだけだ。
ここに居る全員、そのようなことはあるはずが無いと、確信していた。

「―――夕鈴は、私たちに黙って勝手に逃げなどしない…―――夕鈴は、そういう子だよ…」

哀愁漂う黎翔の言葉に、李順は眉を顰める。
しかしすぐにメガネを持ち上げ、次なる可能性を告げた。

「なれば、やはり王宮並びに後宮に精通している者の仕業かと思えます。――そうでなければ、この手際の良さはあり得ません」
「――だろうな」
「なぁ」

黎翔と李順が検証をしている中、浩大の声が響く。
二人はそちらを見て、頭の後ろで腕を組んでいる浩大が目に入る。
そして、浩大は告げる。

「―――お妃ちゃん、下町に居る可能性、って無いの?」


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】11  さくらぱんcolor

なにも進展がないまま・・・時だけが過ぎていく。

じりじりとした思いは、焦がれるものに・・・・

陛下に会いたいっ・・・

流れる雲を見つめて、夕鈴は、はるか遠い陛下を思い涙した。

ある夜のこと・・・寝静まった夕鈴の部屋に、小さな呼ぶ声。

・・・・・っちゃん。

・・・・お妃ちゃん。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】12 twomoon color

名を呼ばれ、夕鈴はぼんやりと目覚めた。

「お妃ちゃん、眼覚めた?大丈夫か?」

小声で掛けられる声の主が、浩大だと認識した途端
一気に意識が覚醒した。

「浩大!」
「し~!静かにね。外に響くから」
「あ、ごめん…」
「見たところ、何処もなんともないようだね」
「うん。大丈夫」
夕鈴は、声を押さえて、寝台から起きあがった。

「で、なんでお妃ちゃん、実家に帰って来てるの?
何にも言わずに夜中に出て行くだなんて、何かあった?」
浩大の問いに、夕鈴は即座に否定する。
「ちがっ!違うの!私…いきなり攫われて…でも、
気づいたら此処に居たの。王宮に帰ろうにも、見張られてて、出して貰えなくて……」

「どういうこと?」
「私にも、分からないの。何がどうなっているのか」
「そもそも、なんで攫われて、ここ(実家)な訳?」
「私が知りたいわよ。あいつは、頼まれて狼陛下の妃を攫ったなんて言ってたけど」
「あいつ?」
聞き返されて、一瞬夕鈴は言葉に詰まった。

「…几鍔よ…」

返した言葉は、呟くように小さかった。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】13 さきcolor

『―――お妃ちゃん、下町に居る可能性、って無いの?』

そう言った俺に、陛下と李順さんは虚を突かれたような顔をした。
そんなに意外だったか?
でも、国を出た形跡もないし、王宮や後宮にも居ないとなると、お妃ちゃんの居所は自ずと絞れる、と自分は思ったものだが。

『―――その可能性を頭から消していたな』
『そのようです――浩大、夕鈴殿の家を一度調べてきて下さい』

そう言われて、攫われたならきっと居ないだろう、そう思っていた俺は驚いた。
何せ、予想外にもお妃ちゃんは至ってふつーにそこに居た。
まるで、普通に帰省しているみたいに。
まるで、後宮での生活など、無かったかのように。
でもそんな考えは、すぐに消えた。
声をかけて起こしたお妃ちゃんは、ただただ驚いたような、安心したような、奇妙な雰囲気を醸し出していたから。

実家に居る言い訳を聞いていると、何故かお妃ちゃんの幼馴染の名前が出てきた。
―――何故ここで、お妃ちゃんの幼馴染が出て来るんだ?
分からないことだらけだ。



何かが…陛下も李順さんもお妃ちゃんも自分も―――誰も知らない事態が起こっていると、そう確信した。

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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】14 さきcolor

「さて。じゃあ行こうか?」
「へ?」

後宮から攫われた後の事を粗方話し終えた私に、浩大は何ともないかのように立ち上がった。

「で、でも…」
「何かあった?」
「だって……几鍔が…」

このまま王宮へ行って、大丈夫なのだろうか?
これまでも、何度試しても王宮の方へは行けなかった。
それが浩大と一緒なら、行けるような気がするのは事実。
―――でも、それ以上に、胸騒ぎがして仕方が無い。
あの几鍔の事だ。
流石に意味もなく国王の妃を攫うなどしないだろう。
頼まれたと言っていた―――それを突き止めなきゃ、この話は終わらないんじゃないの?

「陛下がお妃ちゃんを待ってるよ。心配してた」
「―――っ!」

でもそんな迷いを見透かしたように浩大は言う。
それも気掛かりだった。陛下はどうしているのかと。
もしかしたら勝手に消えたかもしれない妃の事など、もうどうでも良いのではないかと思ったこともある。
―――でも、そんなことは無いとも、心のどこかでは信じてた。
浩大は待っている…心配していると、言っている。
陛下は、私を待っていて…下さってるの?
その不安げな表情を見て、浩大はふっと笑った。

「陛下はお妃ちゃんが居なくなってから、隠密を総動員させて他国に連れて行かれた可能性を考えて捜索させていた。早く帰って、安心させたげなヨ」
「―――…えぇ…そうね…」

流石にそこまでされていた事への衝撃と、そこまで心配をさせてしまった申し訳なさと、そこまでしてくれた事が嬉しくて…色々な感情が綯い交ぜになって、変な顔になってしまった。
ここまでされて、戻らないわけにはいかないじゃない。


―――早く帰らなきゃ。




ぶちんっ

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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】15 沙希color  

夕鈴の頭で何かがはじけた。

「浩大、几鍔を探してここに連れてきて」
「お、お妃ちゃん?さっき戻るって、自分で納得してなかった?」
「ええ、さっきはね。
―――でも、なんか今までのことを思い出したら、几鍔に無性に腹が立ってきたのよ。だって、突然連れ帰って閉じ込めて、何の説明もなくて。私が陛下に心配かけちゃってるのも、王宮に帰れないのも全部全部アイツのせいよ。叱って、話を聞く権利は私にあるわ!」

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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】16 さくらぱんcolor

几鍔を浩大が連れてくる間……
この数日間のことを、思い出していた……

何度考えても

“……おかしい”

几鍔の行動らしくない。

確か、妃誘拐は、誰かに頼まれたと几鍔は言っていた。

“几鍔らしくない”

誰かに頼まれたからといって、こんなリスクの高い仕事を引き受けるだろうか?

それに、何故狼陛下の妃を狙ったの?

浩大と出会えて、王宮でのことも、わかった。

陛下を快く思わない人物の仕業?

その人物は間違いなく几鍔の近くにいる。

それを明らかにしないで、私は王宮には帰れない。

妃を狙う…
すなわち自分が狙われてる。

自分のことは、自分で解決したいわ。

それに、嫌な奴だけど、几鍔が咬んでるし……

一安心したら、いろいろと知らなきゃならないことがあることを思い出した。

……まずは、几鍔だわ。

どうやって、聞き出そうかしら?

今から来る几鍔に、夕鈴は溜め息混じりに、対策を考えるのだった。

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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】17 さきcolor

「―――あれ?そういえば…」

浩大に几鍔を連れて来るよう頼んだのは良かった。
…いや、良かった、と思った―――しかし。
浩大は隠密で、装束もそれなりの恰好をしている。
几鍔は浩大を知らないはず…どうやって連れて来るのかしら?
夕鈴は考え続けたが、結局は何も思い浮かばなかった。
その時―――

家の玄関が乱暴に叩かれた直後、バンッと開かれる。

「―――おいっ!!夕鈴!無事かっ?!」
「―――っ?!」

突然開かれた扉に、すぐに入ってきた几鍔。
その余りの大音声に、夕鈴は一瞬何事かと目を剥いた。
几鍔には丁度会いたいと浩大に頼んだ事と、何か関係しているのかしら?
その答えは、すぐに分かった。

「今そこで歩いていたら…妙なやつが『汀家が大変なことになってるよ~』ってそれだけを言って去って行きやがって…!」
「…」

浩大…
はぁ…と、夕鈴は項垂れ額に手を当てる。
どうやらそれで焦った几鍔は、こちらまで走ってきたらしい。

「おいっ…!お前はそいつに心当たりがあるのか…!?あいつは何者なんだ…!」
「ちょっとは落ち着きなさいよ、几鍔―――その人は私の知り合いよ。訳あって、あんたを呼びに行って貰っただけ」

そういえば、手段については全く言ってなかった。

「俺を呼びに―――?」

几鍔が怪訝な顔をする。
それに夕鈴は表情を一変させ―――真剣な顔で、几鍔へと問う。

「―――几鍔…―――あんた、『誰』に頼まれて、妃誘拐なんてしたの?」

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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】18 さくらぱんcolor

「誰だって、いいだろ……
お前には、関係ない!」

「そうはいかないわ!
関係は、大ありよ!」

「私は、今すぐに王宮に帰らなきゃならないの!
本物のお妃さまの代わりなんだから、お妃さまが心配しているわ。
それに、次も私が狙われるじゃないの!」

「お前、まだこんな危険なバイトを続ける気か!」

「もちろんよ!
私は青慎の為にバイトしてんの。
決して馬鹿父の為なんかじゃないんだから……

それに、次は命の保障がないじゃない。
几鍔が、教えないって、言っても調べるわ」

「お前、この件に首を突っ込むな!」

「イヤよ。
私の命が、かかってるんですからね!
隠したって無駄よ」

夕鈴は、睨むように、じっ…と几鍔の目を見つめると、
几鍔は、根負けしてように、フッ…と視線をそらしてふてくされたように黙った。

「それに…こんなの几鍔らしくない。
私の知ってる几鍔は、こんなことしないはずよ!」

「何か事情があるなら、相談にのるわよ。」

「バカか…お前は。」

「少しは周りを見ろ。
大人しく家に籠もって俺の言うことを聞けよ!
そのほうが利口だと思うがな」


そう言った几鍔は、クルリと向きを変えて
入ってきた扉から、さっさと部屋を出ていった。






…お妃ちゃん!
……お妃ちゃん!

そのタイミングを見計らっていたかのように、浩大が窓から夕鈴を呼んだ。

「几商店の大ばば様って人が、
ひと月前から行方不明らしいぜ!」

「えっ!
……おはばさまがっ!」

夕鈴は、驚き目を丸くした。
おはばさまが行方不明?

あんなに元気で破天荒な人が、ひと月も見かけないなんて変だわ。
怪我しても、病気しても、大人しくしてるはずがない。

…まさか。


今なら、まだ几鍔はさほど離れてないはず。

捕まえて詳しく聞かなきゃ……

「浩大、ありがと!」

夕鈴は、そう言って几鍔を追って駆け出した!


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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】19 さきcolor

――白陽国。とある家。

夕鈴が下町で几鍔に問いただしている頃、ここではとある男たちが膝を突き合わせてぼそぼそと怪しい会話をしていた。

「――どうする?人質として連れて来たは良いが…」
「…しかし、あの方はそれで良いと…」
「しかし!あの方はこの惨状をご存じではないだろう…?!」

その会話は、きっと壮麗であった室内が、見るも無残な状況になってしまった現状でなされていた。

そして今日もまた、大きい叫び声とものが壊れる音が聞こえる。

「――いつまで閉じ込めているつもりだいっ?!こうしている間も、あの家とあの家が…!あぁ!鍔のやつは一体何をしとるんだい!!」

声の主は、大よそ男たちが知っている「人質」とはかけ離れていた。
このような日々が始まっておよそひと月。
いつまでこのような状況が続くのか。

「「「――…はぁ…」」」

しかし男たちは知っていた。
あの方は言い出したら聞かないのだ。
何かしら状況が変わらないと、このままなのだろう。

男たちは窓の外を見て、現状の変化を求めていた。


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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】20 さくらぱんcolor

「――まったく、帰ったら、ウチの男衆を鍛え直さないとダメかねぇ~」

そういいつつも、壁際の水墨画に目をやり、
頭の中で価値のあるものか、そうではないかとそろばんを弾くと…
納得したかのように、水墨画を登り始めた。

彼女が、いくら軽いとはいえ、布でできた掛け軸。
細い紐は、ブツリと切れて…
さほど高くない場所から尻餅をついた。

「イテテ……
コレは、どうでもよかったかの?」

ふんっ…!
と、鼻息荒くメチャメチャに荒れた部屋を一瞥すると、

「もう、そろそろ頃合いかのぅ。」

「まったく、こんなところに閉じ込めおって
この程度で許す…私の寛大な慈悲を有り難く思いなさい!」

おばばさまは、ポンと服の裾の汚れを払いながら、部屋の外の様子を盗み見た。

「見張りは……誰もおぬか。」

そう呟くと、にやりと笑った。
そのまま荒れた部屋の隅に、雑然と置かれた敷物を捲ると……
そこには、ぽっかりと小柄な彼女なら、抜け出ることが出来る穴が一つ。

室内をメチャクチャに荒らし、物音をたてていたのは、
彼女の脱出の計画を悟られぬ為の作戦だった…

「やれやれ……
やっとここから、出ることが出来るわ…」

そう言って、彼女は穴から出て行った。
寝台でふて寝している彼女の身代わりの毛布を残して…

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