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2 現代パラ  幼な妻

現代パラ【幼妻仮夫婦】16  さきcolor

続きwww

―――――――――――――――

きいぃぃぃ…

黎翔は玄関のドアを、ことさら慎重に開いた。
何せ、家の中には逃げ足の早い兎がいるかもしれないからだ。
ここまできたら逃がするもりは無いものの、彼女の逃げっぷりときたら、時々尋常じゃない凹まされ方をするから、油断ならない。
ぬき足さし足忍び足、という表現が実に正しいくらいの黎翔の足取り。
その足は、迷わず台所へと進んで行った。
夕鈴の親友・明玉が『夕飯を作りに戻って行った』と言っていたから、きっとそこだろうと踏んでいたのだ。
案の定、近づくにつれてトントントントン、と包丁をまな板に叩く音が聞こえてきた。

聞こえないように、慎重に扉を開ける。
そこには、エプロンを纏った夕鈴が立っていた。
―――しかし、それ以上に黎翔の頭を真っ白にさせた格好が目に入った。

下手をしたら、下着が見えてしまうのではないかというくらい短いスカート。
それは夕鈴がガスコンロとシンクを行き来するたびに、悩ましげに揺れる。
きっとご飯を作るためにまとめ上げたであろう、ポニーテールも…夕鈴のうなじを、隠していなかった。
歩くたびに揺れるそれは、まるで夕鈴から匂い立つ色気のようなものを醸し出していた。
(もちろん、そう感じるのは黎翔だけである)

黎翔が夕鈴の姿に見とれている間、夕鈴の方はどんどん夕飯を作り上げていく。
まな板の上で澱みなく包丁をさばく姿は、まさに主婦と言えるものであった。

「―――痛っ!!」

その声に、黎翔は驚いた。
突然上がった夕鈴の悲鳴に、黎翔は夕鈴の手元を見た。
視線の先のまな板の上には―――紅い血。
黎翔は状況を忘れ、扉を全開にして部屋に飛び込んだ。

「―――夕鈴っ!!」
「―――っ?!えっ?!」

突然の闖入者に驚いた夕鈴は自分の指先から視線を外して振り向くが…それは出来なかった。
背後から抱き締められる。
自分を包むこの香りには、覚えがあった。

「―――え?!黎翔さんっ?!何で…」
「そんなことはどうでも良い!!夕鈴、どこを怪我した?!」

黎翔はくまなく腕の中の存在を見る。
まな板の上にあった血。
それは扉の向こうで見たときより、ほんの一滴に見えた。
どうやら、指先を切っただけのようだった。
でも、痛かったのだろう。先ほどの夕鈴の悲鳴は、痛そうだった。
だから、この後の行動は必然と決まっていた。
黎翔は、夕鈴の左手を取って、自分の口元へと運んで行った。




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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

2 李順の休暇

【IF臨時花嫁】李順の休暇2

ずっと放置していて申し訳ありませんでした、沙希です。
そろそろ大きな一区切りがつきそうです。
ついたら、コミックスを買い戻します。
ま、つかないかもなんですけどね…。

では、李順の休暇2

snsからの転載で、ラストに大幅改稿を予定しております。

どうぞ

***


夕鈴は陛下がいなくなった後、机に置いてある紙をもう一度広げた。

「陛下のお仕事って本当にいろいろあるのね。ああ、この後は周宰相と話すんだ。ふーん」

お仕事中の陛下をあんまり知らないから面白い。
普段のバイトじゃ、なかなか陛下のことわからないもの。

「なんか細かいこともあるみたいね」

陛下も、こんなに大変だなぁ。

あ、二日目のここのところ、もしかしたら少し、休憩できそうかも。

「お妃様。失礼いたします。方淵です」
「どうぞ」

「朝からどうしたのですか?方淵殿」
「私としては不本意極まりないのだが、李順殿から不在の間の貴方の面倒を頼まれている。精々大人しくしていただきたいのだが、仕事だ。何かご要望は?」

あいかわらず、なんてムカつく喋り方なのかしら!
でもさっき思いつきを実行すれば、きっと陛下は喜ぶ。

「あの、明日厨房をお借りしたいのですが…」

「厨房?!」
「貴方は厨房で何をするつもりなのか!」

「陛下にあげ饅頭をつくって差し上げようと思いまして」

やっぱり、ちょっと方淵は面倒くさいわね。
李順さんならすぐいろいろ理解してくれるのに、そんな食ってかかるみたいな言い方しなくたっていいじゃない。

「ほら、ここのところ。陛下は仕事が早いですから、一緒に休憩…ほどの時間はなくても、暖かい菓子を差し入れる程度の時間がありそうなんです」

仕方なく方淵がわかりやすいように髪を指差しながら説明する。

「たくさん作りますので方淵殿にも差し上げますね」

「全く…陛下は政務でお忙しいというのに…」

「だめ…ですか?」

夕鈴はなんとしても陛下に差し入れをしたい、と方淵に詰め寄た。方淵は慌てて後ずさり、答える。

「わかった。厨房には伝えておこう。失礼する」

「お願いしますね。方淵殿」

方淵は少し乱暴に扉を閉めた。

ーーーああ、もう!あのお妃が急に近寄ってくるから、うっかり厨房の件を了承してしまったではないか!!
それにしても陛下に差し入れか…。お妃らしいといえば、らしいな。

そういえば、後宮の妃の部屋というのは質素だったな。
後ろだてがいない、というのはああいうことなのか、と思うとすこしだけ、あのお妃が可哀想な気もしてくる。

ーーーいやいや、政務室に入り浸って、我儘放題ではないか!

方淵は不機嫌さを露わに、どすどすと歩き、陛下のいる部屋へむかっていった。



「陛下。お妃様のご機嫌を伺いましたところ、明日厨房を使いたい。とのことでしたので、管理者のところに話にいってまいります」

黎翔の眉が少し上に持ち上がった。

「妃私室に、入ったのか?」

「李順殿から、妃のことは気にかけるように、との事でしたので」

目付きが鋭くなる。

「そんなにっ!あのお妃が良いのですか!!」

方淵は部屋に立ち込める暗雲に堪らず声を荒げた。

「あの妃から良いのだ。私のために菓子を作りたいと願うような娘だから。わからんか、方淵」

「わかりかねます。陛下」

黎翔は怒気をはらみ、方淵を睨みつける。

「だろうな。ところで、予定を早めて夕刻、妃のところへ行く時間をなんとしても作れ」

「何故そうなるのですか陛下!あのようなお妃など…っ」
「李順は、私がそういえば、なんとか時間をいつも作っていたぞ」

方淵は、臨時側近の自分の立場を思い出し、慌てて返事をした。

これも、李順殿からいただいた、陛下のための大切な仕事なのだ、と。

それから黎翔は執務室の扉を開いた水月がそのまま扉を閉めて早退してしまうほどの気迫で政務をこなし…


結局、夜までぎっちりみっちりあったはずのその日の政務はお八つの時間にはすっかり終わっていた。

「方淵、ご苦労だった。もう下がれ。今日はもう一切、妃にも私にも関わるな。私は妃の元へ行く」
「はっ」

執務室には方淵がひとりぽつんと残った。

「李順殿も毎日大変だ、な…」



つづく

2 李順の休暇

【IF臨時花嫁】李順の休暇3

黎翔が不機嫌に人を遠ざけ妃私室に向かうも、夕鈴は不在だった。

急ぎ侍女に話を聞くと夕鈴は老師と勉強中だという。

「…掃除婦バイトか」

急ぎ黎翔は立ち入り禁止区域へと向かった。

「夕鈴」

「陛下っ!どうされたのですか?今は宰相殿とお話されているはずの時間では?」

「とうに終わった。今日の政務は終いだ」

「さすが陛下!お早いですね。方淵殿もさぞ…」
「何故そこで方淵の名前が出てくるのだ。君は私の妻だろう」

へ、陛下ご機嫌が悪い?

「朝、方淵が妃私室へ入ったと聞いたが」

「はい」
「何故、入れた」

「李順さんも普通に入ってきてましたし、臨時とはいえ側近ですから、そのようなものか…と」
「何をしている。君は私の妃なのだ。方淵など勝手に部屋にいれるな」

もしかして、陛下…ものすごぉく、怒ってる?

狼陛下の怒気に当てられ、夕鈴は蒼ざめた。

「失礼ながら、陛下。私は失礼致します。バイト娘が随分、怯えておるように見えます。ごゆっくりお話しくだされ」

老師の言葉に黎翔がはっとして夕鈴の顔を見ると、すっかり身を固くしている。

「ああ!ごめんごめん!怖かったね!ごめんね!ちょっと、お仕事頑張りすぎちゃったみたいで疲れてたんだ」
「お疲れなのですか!陛下!それならすぐおやすみに…」
「だいじょーぶだいじょーぶ!夕鈴の顔見たら元気でたよ」

「そうですか!よかったです!ところで陛下…」
「どうしたのゆーりん」
「あの、ちょっと距離が近いのですがっ!!」

「近いの…だめ?」

「あのあのっ!ダメっていうか…。私!今埃っぽいと思うんです!!」

「あははっ!気にしすぎだよゆーりん!」

「笑い事じゃないです!」

「そう?それより早く部屋、戻ろう?埃っぽいのが気になるなら、一緒に湯浴み、する?」

「………………」

「へ…陛下。やっぱり怒ってます?怒ってるからそうやって私のこと困らせるんですか?そうですね?ごめんなさい」

夕鈴の目が瞬く間に見開き、中に水が溜まって行く。

「ごめんなさい陛下。でも私!分からないんです!なんで陛下が怒ってるのか」

溜まった水が夕鈴の大きな目から零れ落ちる。

「だから、陛下悪いところがあるなら治します!ちゃんとおっしゃってください!」

「それとも呆れてこんなバイト妃にいうことはないということでしょうかっ⁈」

「夕鈴。ちょっと落ち着いて。ゆっくり話そう。椅子がないから床になっちゃうけど、座ろうか。夕鈴がぴかぴかに磨いてくれたからここでもいいね」

そういって黎翔は少し眉尻を下げて微笑んだ。

「おいで」

両手を出して胡座をかいた膝の上に夕鈴を乗せ、お腹に手回し、夕鈴の耳もとでゆっくりと喋り始めた。

「本当に怒ってはいないんだ。ちょっとヤキモチ焼いちゃっただけ」

「方淵と夕鈴普段から仲良いから、旦那の僕としてはちょっと複雑で、びっくりしちゃっただけだよ」



「いえ、私こそ取り乱しちゃってごめんなさい、へーか…」

本当に陛下はバイト妃に優しいわね。

「落ち着いた?じゃあ着替えて夕餉にしよう?」

陛下は私を膝上から降ろし、立ち上がった後、まだあまり足に力を入らない私に手を伸ばして立たせてくれた。

「でも!僕にヤキモチ焼かせたお詫びに夕餉は食べさせてもらおうかな!」

「えっ陛下!それってお詫びなんですか!」

「お詫び、だよ?」


そういって笑う陛下の顔は、やっぱり私には毒だった。
そして、そんな笑顔の陛下に、私は逆らえるはずもなくーーー。



次の日ーーー。

また朝早く陛下は妃私室へやってきた。

「ゆーうりんっ」

「またですか!陛下!」

「李順の休暇中は毎日、一緒に朝ごはん食べようと思って!着替え、手伝ってあげようか?」

「昨日も!お断りしましたよね!」

「今日は、手伝ってもらいたい気分かなーと思って?」
「そんな気分なりませんから!」

そして、やっぱり陛下は夕鈴が扉を開けると、すぐ目の前にいたのだった。

そして今日も慌ただしく朝餉をとり、黎翔は朝議へ向かう。

しばらくすると方淵がやってきた。

どうして今日も方淵殿がくるの⁈
昨日陛下怒らせちゃったのに‼︎

「お妃様、失礼いたします」
「ちょっと待ってください!方淵殿‼︎」

「何か不都合でもお有りなのか」
「いえ、あの〜」

「なんだ」
「昨日、陛下酷くご機嫌が悪かったでしょう?」

「だからどうしたというのだ」

「方淵殿を私の私室へ入れたのが気に入らなかったみたいで…。今日は扉越しのお話し、ということにできないでしょうか…」

「私が妃の部屋の前で話など、見る人がみればどんな噂になるかわかったものではない!」

方淵の声が少し大きくなった。

「不本意だが、陛下には妃私室へ入ったとは言わないので、失礼する」

方淵はそういうと扉を開けて入ってきた。

まあ、陛下に言わないなら、大丈夫…よね?

「昨日、貴方から頼まれた厨房使用の件は話がついた」

言いながら方淵は懐に入れていた陛下の予定表を取り出す。

「陛下がお時間を作れるのはここのところだ。ただ、貴方が一緒に休憩できるような時間はないからな!厨房はその前、昼過ぎに手配してある。ああ!忌々しい。なんで私がこのような手配をしなければならんのだ!」

「ほお、私の妃と話すのは忌々しいか、方淵」

気がつくと後ろには気配を消した狼陛下が立っていた。

「「陛下っ⁈」」

夕鈴と方淵の声がちょうど同時にでた。

「同時とは仲が良いな。妃。方淵」

夕鈴と方淵の顔色が見る間に蒼ざめてゆく。

「妃よ、方淵を部屋に入れぬよう、言わなかったか?」

「も…申し訳ありませんっ‼︎陛下」

「方淵、仮にも我が寵妃の部屋に入るなど、無礼とは思わんのか」

「しかしっ…!」

「元気が良いのも結構だがな方淵。明日から来なくても良いのだぞ?」

陛下…本気だ。
夕鈴は陛下の鋭い目つきで、はっきりとわかった。

「陛下っ‼︎申し訳ございません。この度のことは全て私の落ち度でございます!処罰は私が如何様にも受けますので、どうか方淵殿は処分なさらないでくださいませ!陛下の優秀な家臣ではございませんか!」

陛下へと走り寄り腰に手を回しながら嘆願する。

「……命拾いしたな、方淵。妃にこうも泣きつかれては仕方あるまい。今日は1日妃と過ごす。政務はそちらでどうにかしておけ」

方淵苦虫を噛み潰したような、ひどい顔色になった。

「畏まりました、陛下」
「私の機嫌が変わらぬうちに政務をしろ。あと、今日の厨房の件はなしだ」

「では、失礼いたします」



続く

2 李順の休暇

【IF臨時花嫁】李順の休暇4

部屋の中に気まずい沈黙が満ちる。

「陛下っ!」

夕鈴は思い切って声をかけた。

「ゆーりん」

黎翔は明るい小犬の表情だ。

「陛下」

「ゆーりん、僕今とーっても怒ってるんだ」

と、最初は見えたし確かに笑っているけれど、背後にどす黒い何かが、見える。

「なんで、お嫁さんが僕じゃなくて方淵の味方、するの?」

「えーと。あの、陛下…」
「そうだ、ゆーりん、処罰は代わりにゆーりんが受けるんだよ、ね?」

「は…い。たしかに…そう、いいまし」
「だよね!いったよね!夕鈴になにしてもらおうかなぁ!」

あれ?なんか一転して機嫌良い?

ニコニコ顏の小犬は紙を広げ、お嫁さんにして欲しいことリスト、を書き始めてしまった。

「どうしたの?ゆうりん。まさか、お嫁さんにないがしろにされたお詫びがひとつ。なんて思ってないよね?」

夕鈴は恐る恐る、流麗な文字で埋め尽くされて行く用紙を見る。

・膝枕でお昼寝
・一週間朝餉昼餉夕餉は全部食べさせてもらう
・夜は一緒の寝台で眠る
・新しい衣装と宝飾品を仕立てる
・寝る前は夕鈴の方から口づけをする
・政務中は目の届くところから離れない
・一緒に湯浴みをする
・朝の着替えをお互いに手伝う
・僕以外の人間と口をきかな「えっ!ちょっと!まだあるんですか⁈」

「だって、李順が戻ってくるまでまだまだ時間、あるよ?」

「これ…本当にするんですか⁈」

「今2日目だから、今日入れて6日間だけでいいんだよ?僕、およめさんには優しいからね!」

「でも、これは…本当のお妃様とするべきこと、では?」

「じゃあゆーりんはしてくれないの?なんでもするっていうのは嘘?」

「でも、口づけとか、湯浴みとかぜったいぜったいぜーったい、無理ですっ!」

夕鈴はその様を想像したのか見る間に真っ赤になっていく。

「仕方ないなぁ夕鈴は」

「許してくださるんですか!」

夕鈴の顔が見る間に明るくなっていく。

「1日一緒に下町散策。夜は泊りで一緒の寝台で休むこと。夕鈴からの口付けは…いいや!」

「ありがとうございます!!」

夕鈴はこれなら自分にもできそうだと飛びついたあと、だんだん表情を暗くした。

「あの、陛下、ご政務は?」

「明日は朝議に出られるように朝一番で帰るし、今日は方淵に任せたから大丈夫!方淵優秀だから、1日くらいはちゃんと、どうにかしてくれるよ!」

「じゃあ、行きましょうか!」

夕鈴も少しは方淵が可哀想とは思ったが、勝手に入ったのは自業自得だし、仕方ないわね!と割り切ることにしたのだった。



「へ…李翔さん!買い食いばかりしていたら昼餉が食べられなくなってしまいます!」

「大丈夫!ゆうりんのお料理は別腹、だよ?」

「そんなこといって。残したら承知しませんよ李翔さん!」

「だいじょーぶ、だよ?」
李翔さんは喋りながらまた饅頭を1つ口に入れる。

下町におりて、夕鈴が陛下…今は李翔に、したいことを確認したところ、夕鈴のバイトのない日にすることを一緒にして見たいというものだった。

そして今は市場で昼食用の買い物の真っ最中、のはず…なのだが。

李翔は露店で気になる庶民の食べ物、主にお菓子を買い漁り、なにかと高価なものを夕鈴に贈ろうと企て、材料に至っては高いものの方が美味しいのではないか、といって譲ろうとしない。

「ゆーりん。この髪飾りはどう?」
「李翔さん!それより今は大根の特売です!!」

「ゆーりん?これは僕への罪滅ぼしなんだよ?わかってる?あんまり逆らったら方淵を降格…」

「あーもうわかりました!」

夕鈴はまだ午前だというのに疲れ切っていた。

「1個だけです。1番似合うの選んでくださいね?」

「やったー!ついでに下町の服も1着、贈らせて、ね?」
「ちょっと李翔さんなに増やしてるんですか!」

「やっぱり方淵は地方で修行…」
「あーもう!わかりました!下町衣装ですからあまり高級なものはダメですからね!」

「髪飾りは仕事中も身につけられるような…」

「ダメです!」

幻の小犬の耳が見る間に垂れ下がって行く。
「ダメ?お嫁さんにはいつも可愛くいてもらいたいんだけどな!」

「こんないきそこない可愛いなんていうの李翔さんくらいですよ!」

「ゆーりんは可愛いよ?」

「ほら、こっちおいで?衣装選びだ」

そういって李翔は当たり前のように夕鈴の手を取り、細い路地を進んで行った。

「李翔さん、こんなお店知ってたんですね」

「僕が下町に出るときの服はいつもここで買うんだ」

店内には男物女物を問わず様々な衣類と雑貨が所狭しと並べられ、値段もそこそこ、品質はさすがお忍びとはいえ陛下が買い物する店、である。

「いらっしゃいませ。まぁ、李翔さん!お店に女性をお連れなんて初めてですね!」

明るい声が響く。
年の頃は夕鈴より10歳ほど年上だろうか、特別美人とは言えないが、上品そうな女性が話しかけてきた。

「こちらの女性に新しい服を一式選んでください」

「まぁまぁ可愛らしい御嬢さん!どういったイメージでしょうか?」

「全ておまかせでお願いします。僕の隣に立った時、似合いの夫婦に見えるように。新しい服は直ぐに着ていきます」

「ちょっとへい…李翔さん!似合いの夫婦って!違うでしょ!」

夕鈴は顔を真っ赤にして言う。

陛下は夕鈴の肩を抱き寄せ耳元そっと話す。
「今日1日、君は僕のもの、だろう?」

ーーーへっへっ…陛下〜近いっ!!

夕鈴は飛ぶように李翔のそばをはなれ、店員のすぐ横に並び立った。

その様を見た店員はくすくすと声を立てて笑っている。

「十人が十人とも振り返るような素敵なご夫婦になることを、私が保証いたします」

2 李順の休暇

【IF臨時花嫁】李順の休暇5

「ええと、御嬢さんは夕鈴さんと仰るのでしたっけ?」
「は…はい」

こんな雰囲気を纏えれば、自分もちょっと後宮で過ごしやすいのではないか、などと考えてしまい、気後れする。

「夕鈴さんは、衣装のご希望はありますか?」
「え?希望…ですか?」

「ええ、漠然と、で構いませんよ?」

そういって女性は夕鈴が何か言うのを待っている。

「あ…はい」

どんなのがいいだろう。
えっと、陛下の趣味は…お色気美人?無理無理!どうやったってお色気なんかなるわけないじゃない!

浮かんだ考えを打ち消そうとして、百面相になってしまうのを、女性は柔らかな表情で見守る。

「でも、ちょっと大人っぽくなれたら、いいなぁ…」

思わず口に出してつぶやいてしまった。

「大人っぽくですね、わかりました」

言うや否や店員は次々様々な色の衣類を肩にあてていく。
大人っぽく、という要望に答えようとしてか、普段の明るい色合いより少しくすんだ濃い色味のもの多くあててくれたが、そのどれもが夕鈴の顔色を悪く見せるばかりだった。
最初は張り切って様々な服をあてていた店員もだんだん、顔が曇っていく。

「いつもお似合いのものを選ぶのが上手なんですね」

終いにはそんなことを言われてしまった。

「あの、いいですよ。そんなに大人っぽくならなくても。私、可愛い感じも好きです」

夕鈴は少しがっかりしつつも笑顔でそう言った。

「すいません、私の力量が及ばず」
「とんでもない!こちらこそ無理なお願いをしてしまって」

結局夕鈴はせめて普段あまり着ない色を、と淡い緑の衣装を選んだ。
小物も全て緑の濃淡で選んで単色にしたのが、せめてもの大人っぽさ。

「ゆーりん、かわいいっ!!」

出てくるなり李翔は飛びつかんばかりの勢いで言う。

夕鈴は綺麗、と言われなかったことに少し寂しさを覚えた。

ーーーでも、せっかく買ってくれたものだから、喜ばないと。

「お勘定するから、ちょっと外で待ってて」
「はい!」

夕鈴は気を取り直して大きな声で返事をし、店の外にでた。

「やっぱり『綺麗』とは違うわね…」

小さな溜息がでる。

ほどなく李翔がお勘定を済ませてやってきた。

「夕鈴!おまたせ!」
「李翔さん!素敵な衣装ありがとうございます」

蕩けるような笑顔で黎翔が話し始める。

「僕がゆーりんに贈りたかったんだ。こちらこそ。受け取ってくれてありがとう」

夕鈴は小犬なのに甘い李翔のことばにどぎまぎしてしまう。

「そっ…そういえば!買い物!!忘れてましたっ!もうお昼時ですよね!どうしましょう」

どうしていいのかわからなくなってしまった夕鈴の口から出たのは、結局そんな言葉だった。

「じゃあ僕、明玉ちゃんの飯店に行ってみたい」

小犬は無邪気に笑っている。

「ええっ⁈明玉のところですか⁈ちょっと恥ずかしい」

「ダメ?ちょっと食べて見たかったんだ」

夕鈴はあとで散々明玉にからかわれる様を想像して、ちょっと嫌だと思ったが、明玉の飯店は本当に安くて美味しいから李翔さんにも食べてもらいたい!と思い切って行くことにした。

「明玉の飯店本当に本当に美味しいんですよ!」
「楽しみだな!」

2人は手を繋いで下町を仲睦まじくあるいている…ように見えるが、内心李翔は気が気でなかった。
周囲を見ると、普段より夕鈴を見る男が多いのだ。

几鍔くんには絶対会わないように気をつけようと李翔は内心硬く決意する。

そして李翔はそれにばかり気をとられていて、空の様子を見ていなかった。
夕鈴は夕鈴で明玉の飯店の美味しさと安さを李翔に伝えようと懸命になっていて。

結局2人が気づいたのは大粒の雨が降り出してからだった。

「夕鈴急ごう!」
「そうですね!」

手を繋いで走って二人が仲良く飯店に入る。

「いらっしゃいませーって夕鈴!見慣れない服ね!びしょびしょじゃない!あっ!!泥も跳ねちゃってる!ちょっとこっちいらっしゃい!」
そういうと明玉はぐいぐい夕鈴を店の奥にひっぱる。

「ええと、貴方は…最近夕鈴と話題になってる男の人?二人で走ってきたんでしょ?不思議ね、全然濡れてないし汚れてない。夕鈴は1度奥連れてくから、そこらの席ついてて」

「ああ…うん。じゃあ夕鈴、僕待ってるね!」




「りしょうさん…」

暫くして、夕鈴は酷く暗い顔つきででてきた。

「衣装よごしちゃってごめんなさい。せっかく頂いたのに…」

おずおずと李翔に、言いづらそうに申し出る。

「ぜんっぜんわからないですよね!」

「うん、夕鈴全然汚れてるようには見えないよ!」

「でも…ここ」

言われてよくよく覗き込むと、裾のところにうっすら泥はねの後があった。

「せっかく、李翔さんに頂いたのに…」

明玉が殊更大きな声でいう。
「汚しちゃったなら新しいの買ってもらうチャンスじゃない!何着だってねだればいいわよ!」

「夕鈴が欲しいならいくらでも買ってあげる!」
「ほら!旦那もそう言ってくれてるじゃない!」

「でも…」

夕鈴が更に言い募ろうとしたとき、飯店の扉が開いた。

「いらっしゃいま」「几鍔!!なんでこんなところに来たのよ!金貸しが明玉に用があるわけないでしょ!」

語気も荒く夕鈴が噛み付く。

「昼間っからうるせーなぁ。この雨だし休憩になったんだよ!んで、昼飯でもと思ってきただけだ」
「明玉に変なことしないでよ!」

几鍔は煩そうに左耳に指をいれる。

「してねーよ!ん?そういえば服がちげーな。なんだそれ?」
「あんたねぇ!人の格好みてなんだそれとか失礼だと思わないの⁈」

「素直に感想言っただけじゃねーか!」

夕鈴は握り拳を作る。

「まあまあ几鍔。綺麗だって素直にいったら〜?」

明玉がしたり顏で几鍔の顔を見た。

「はっ。こいつが綺麗なわけねーだろうが」
「えーっ。夕鈴はとっても綺麗だし可愛いよ?服で普段と雰囲気が違うから僕、どきどきしちゃう」

夕鈴は先ほどまで几鍔への怒りで握りしめていた拳をほどき、真っ赤になり、かちこちにかたまったあと、ゆっくりと椅子に座った。

几鍔はさも当然という顔で夕鈴たちと同じ座につく。

「いつもの三人前ー」
「じゃあ僕たちもそれを」

「はーい!合わせて五人前ですねー」

明玉はさっと注文を取り厨房へ向かった。

「てゆーか!なんで!あんた達この席に座るのよ!」
「ああ?座っちゃいけねーのかよ」
「まぁまぁ姉さん落ち着いてくださいよ」
「綺麗っすよ」

「だいたい李翔さんも!なんで同じの頼むんですか⁈」

ニコニコと尻尾を振った小犬は答えた。

「幼馴染の几鍔くんが頼むならきっと美味しだろうとおもって」
「それは…!確かにコイツいつもが頼むのは1番人気の品ですが!」

「やっぱりね!楽しみだなぁ!」

李翔は幻の花を背景にとばし、無邪気に言う。

まもなくして、明玉が肉まんとスープのセットを夕鈴と李翔の前にだした。

「几鍔達はもう少し待ってて。来たのは夕鈴達のが先だから」

2人が食べ始めると自然と口数は減り、やがて几鍔の元にも料理が運ばれ、5人は無言で食べ続ける。やはり几鍔達は食べるのが早く、食べ終わりはほとんど同じだった。

外を見ると通り雨だったのかもう止んでいる。

「じゃあ行こうか」

先に立ち上がったのは李翔だった。

「お勘定、几鍔くんたちの分もお願いします」

「ええっ!李翔さん。あいつらの分なんか必要ないですよ」
李翔ははっきりと几鍔をみて微笑んだ。
「僕が見れない下町の夕鈴を見せてくれたお礼に、ね」

几鍔は鋭い目で見るも李翔は鮮やかにかわし、さっさと勘定を済ませ、見せつけるように夕鈴の手を取り出口へと歩く。

「けっ!気にいらねぇ」

几鍔は小さくなってゆく二人の背中を見ながら小さく呟いた。





つづく

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】23 さくらぱんcolor

「おっ…
おまえ、とりあえず手を離せっ!
苦しい…」

「あっ…ゴメン。
つい……」

いつの間にか、几鍔の胸ぐらを掴み
締め上げてた。

「…興奮しすぎだ!
バカ女!」

「なんですって!
人が、 心配してるのにっ!」

「だから、おまえは首を突っ込むな!
コレは、俺の問題だ!」

「何、言ってんの?」

「私は、あんた達に誘拐されたのよ!
私の問題でもあるわ!」

「あんたが、イヤだと言っても、
私は、首を突っ込まさせてもらうわ!!!」

「だから、お前はバカなんだ……」

「バカってなによ!
さっきから、黙って聞いてれば、バカバカって!」

「で……結局、おばば様は無事なの?」

「……本気か!?」

「ヤラレっぱなしは、イヤなのよ!」

「バカ女っ!
教えてやんねー」

そう言った几鍔は、ひらひらと片手をふりながら帰っていった。

「教えなさいよ!
一人で調べるわよ!」

「勝手に、しろよ!
俺の邪魔だけは、すんなよ!」

相変わらず、ヤな奴。

結局、何も収穫はなくて……

夕鈴は、

“絶対に自分で解決してやるんだからぁぁ~”

沈む夕日に、決意するのだった。


2 現代パラ  幼な妻

現代パラ【幼妻仮夫婦】17  さくらぱんcolor

「えっ!

あっ!?

ヤ……黎翔さん!」

肩越しに、手首をとられて
わずかに切った指先をナゾラれた……

黎翔さんの口に含まれた、切った指先が熱い!

夕鈴は、恥ずかしさと熱さで…
瞬く間に、両目に涙が溢れた。

「思ったより、深く切ってなかったけれど……」

チラリと見た黎翔さんの赤い瞳は、揺れていた……

「夕鈴、泣いてる。
そんなに、痛かった?」

「……!
コレは……

(恥ずかしくて、なんて言えない。)」

「もう、大丈夫ですから、離してくれませんか?」

近すぎる距離。
未だに、握られた手首。
舐められた指先が、熱すぎる。

羞恥で、燃えたつ肌が、肌を赤らめさせる。
黎翔さんに、見つめられて夕鈴は、落ち着かなかった。

「離して…ください。」

掠れた声は、小さくか細かった。

ポロッと、耐えきれずこぼれ落ちた涙が
頬に落ちた。



「イヤだ!」

「キチンと、消毒しないと……」

そう断言した黎翔さんは、再び夕鈴の指先を口に含もうと
口元に夕鈴の指先を寄せていった。



プロフィール

momo苺

Author:momo苺
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momo苺は、このログ倉庫の架空番人です。
コミュの某所にて、メンバーと呟いています。

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