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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】25 さくらぱんcolor

夕鈴の下町での聞き込みは、あまり芳しくなく
だらだらと時間ばかりが過ぎていった。

いつの間にか、聞き込みは町外れの方まで足を伸ばしていた。
この辺りは、あまり治安がよくなくて……
確か几鍔も手を焼いていたはず…
ふと気付けば、人も途絶えていて……

いくら鈍い夕鈴でも、さすがに身の危険を、感じて
踵を返して、来た道を戻ろうとしたとき・・・・
いつの間にか、柄の悪そうなごろつきに囲まれていた。

「なっ…なによ。
あんた達。
そこどいてちょうだい!!」

「あいにくと、あんたに用があってな。
最近、几家の女主人をかぎまわってる小娘って、あんただろ。」

「それが、どうしたのよ。」

「目障りなんだよ。
ちょっと、こっちへ来てもらおうか。」

「いやよ。
大人しくついていくと思ってんの?
大声だすわよ。」

「無駄だよ。
このあたりは、俺らの縄張りだ。
ダレも助けは来ないさ。」

「~そう?
嫌がる女の子を、無理やり連れて行くのは、よくないなぁ~~」

えっ!?

ごろつき共の垣根から、ひょっこり現れた人物に、夕鈴は目を疑った。
ここにいるはずのない良く見知った人物だったから……

にこやかなその人物は、慌てる様子も無く
ゆっくりとこちらへと近付いてくる。

「へ・・・・李翔さん!?」

「大丈夫、夕鈴?


ねぇ……
その娘、返してくれない?
僕の大事な娘なんだよね~~」

穏やかに笑っているはずなのに、その場に居る誰もの背筋が凍りつきそうになった。

“冷酷非情の狼陛下”

我が国に、君臨する国王陛下が、こんなところに居るはずがない。
立ち上る冷たいオーラに、 その場の誰もに戦慄が走った。

「なんだ・・・・こいつは!?」

夕鈴を取り巻いていた、ごろつきは一人。
また一人と倒されていった。

スローモーションのような出来事に、夕鈴は固唾を呑んで
彼を待った。

「・・・・李翔さん!?」

陛下……怒ってる!?
蒸し暑い街角で、この周囲だけ気温が急激に下がった気がした。

……続く

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

2 現代パラ  幼な妻

現代パラ【幼妻仮夫婦】19  さくらぱんcolor

彼に引き寄せられて……胸の中
黎翔さんのオーデコロンの香りを強く感じる。

二人分の重さで、軋むソファーに
夕鈴は、激しい動揺を覚えた。

耳元で黎翔さんの囁き声と熱い吐息。
いつに無く近すぎる、この距離は、夕鈴を焦らせた。

「離してください…「離さない!」」

「こんなに、可愛らしいお嫁さんが目の前に居るのに……
離すわけないよ。」

「だって、私たち…「偽者の関係?そんなもの……」」

ギュッと抱きしめられて、息が苦しくなる。
くらくらと廻る視界に、黎翔さんの甘く低い囁き。

さっき……口付けられて
手当てしたばかりの指先がとても熱くなった。

頬が火照る
耳朶までもが、熱い。

ダメよ。
……夕鈴!
流されちゃダメ!!!
黎翔さんは、からかっているだけよ!!

ズキン。
胸が鋭く痛む。
理性が、呟く。

「ねえ、夕鈴。
……どうして欲しい?」

危険な香りに、頭に霞がかかる。

でも……
もしかしたらが、頭をよぎる。

“愛してる”

なんて……黎翔さんは、一言も言ってないのに。
勘違いしそうになる。

なんて……ズルイ人。

夕鈴の視界が、じわりと滲んだ。

「どうしてほしいって……決まっているわ。
離して……ぜんぶ偽ものだもの……」

「偽者か……
強気な君も、魅力的だが・・・
大人な私は
今すぐ、君との関係を本物にすることにも出来る。


どうしようか……夕鈴。」


「ひゃあんっ!!」

唐突に
ぺろり…と,、耳朶を黎翔さんに舐められて・・・
夕鈴は、変な声が出た。

「可愛らしい声だな。
このまま…いっそ、本物にしてしまおうか?」

「かっ……からかわないでください!!」

真っ赤になって、抵抗する夕鈴を、黎翔さんは、クスクスと笑って
ソファーに押し倒した。

「そんな姿の君が悪い。
君が言うところの、悪い大人なら……」

「これが、普通の反応だろ?」

んっ!んぅ。。

イヤ!
黎翔さんっ、やめてっっ!!!


こんなのヤダッ



・・・ずきん。





胸が痛い。








・・・ずきん。





愛してるの?





…ずきん。




ズルイよ。




黎翔さん







・・・・長い長いKISSに、夕鈴が流されそうになった時。



突然、静かな部屋に
けたたましい電話のコール音が鳴り響いた。



……続く

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ジャンル : 小説・文学

2 現代パラ  幼な妻

現代パラ【幼妻仮夫婦】20  さくらぱんcolor

その音に、いち早く反応したのは、夕鈴だった。

「黎翔さんっ・・・電話!」

「・・・・っ!」

「黎翔さんっ!」

助け舟とばかりに、タイミングよく鳴り響いた電話に、夕鈴は飛びついた。
背中で、ぶつぶつと言う黎翔さんの言葉は、あえて無視した。

「はい、珀です。」

「ゆうりーーーんっっ!!!
助けてっっっ!!「その声は明玉!?」」

「助けてって、どうしたの?」

「聞いてよ!
隣の家が、ボヤ出したのっっ
とばっちりよ!!!
家ン中、水浸し!!!

・・・・・ったく。

夕鈴、今晩泊めて!!」



……続く

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】26 ひしょきらcolor

ごろつき達がのびているのを一瞥して確認した黎翔は、
立ちすくむ夕鈴の前へと歩を進める。

「夕鈴・・・・・・」

―――やばい、怒ってる!!!
先刻ほどではないものの未だ冷気を含んでいる黎翔の声に、
夕鈴は思わず身をこわばらせた。

「ち、ち、違うんですっ!!い・・・家出とかでは決してなくっ!
 と言うか正直、私自身もよく状況が飲み込めてなくて・・・っ」
夕鈴は大慌てでブンブンと両手を振り、何とか現状を説明しようと
思いついた言葉をとにかく無造作に並べたてる。

しかし。

ふわり。懐かしい匂いと温かさが、自分を包み込む。
気がつくと、夕鈴は黎翔に抱き竦められていた。

「―――あぁ、大体の話は浩大から聞いた。
 また君を怖い目に遭わせてしまったな・・・すまない。」
「陛下・・・ごめんなさい・・・」
夕鈴は思わず、黎翔の衣をギュッと握りしめた。

心配と迷惑をかけてしまった、という申し訳なさと、
家出じゃないと分かって貰えていた事への安堵、
そして、何日かぶりに大好きな人に会えた嬉しさ。
それらが大粒の涙となり、夕鈴の瞳からポロリと零れ落ちた。


--------------------


「―――さて、と」
夕鈴が落ち着いた頃合を見計らい、黎翔はひょいと夕鈴を抱き上げた。

「ちょっ、へ・・・李翔さんっ!?!?」
「それじゃ、帰ろっか♪」

先程までの、誰もが圧倒された冷気は跡形もない。
むしろ、そろそろ耳と尻尾が見えそうな勢いだ。
黎翔が浩大から李順へと伝えさせた『伝言』。
それは、『妃を迎えに行ってくる』という事だった。

「ちょ、ちょっと待って下さい!
 私まだやらなきゃいけない事が・・・!!」
「え~、君がやらなきゃいけない事?
 早く王宮に戻って僕を安心させる事に決まってるよね♪」

夕鈴は、何とか降ろしてもらおうとジタバタもがくが、
黎翔はまったくお構いなしだ。
―――どうしよう、このままじゃおばば様が・・・!!


その時、黎翔の足がピタリと止まった。
「・・・あれ?李翔さん?」
ただし、その両腕は夕鈴をしっかりと支えたままで
降ろしてもらえそうにはなかったが。

「―――ったく、町外れの方に歩いて行ったと聞いたから
 様子見に来てみたら・・・何やってんだ、お前。」
「き、几鍔・・・」

黎翔の視線の先に目を向けると、聞き覚えのありすぎる声。
そこには、腕を組んで憮然とした表情の几鍔が仁王立ちしていた。

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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

春・夏・秋・冬 のご説明

狼陛下の花嫁キャストで、短編を作ってください。

ルールは、簡単☆
●必ず短編の順番が、春・夏・秋・冬であること。
読みきりで、あることだけです。

設定は、どちらでもいいんですけれど。
現パラより本誌沿いかな・・・

では、春からスタートです。

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

一巡目【春】   OCOcolor

 「ふんわり桜、お花見」


黎翔×夕鈴(内緒の恋人設定)



「見てください陛下!!綺麗ですね〜。」

風に舞う桜の花びらを眺めながら夕鈴は黎翔とお花見をしていた。

「そうだね…でも本当は満開の桜を夕鈴に見せたかったんだ。遅くなっちゃって…少し散りはじめてきちゃっね…ごめんね。」

黎翔は幻の耳と尻尾をしょぼーんとさせて夕鈴を見つめていた。

「( ズキュン/////)そ、そんなことないですよ!!まだまだ見頃ですよ!!そうだ。お弁当作ってきたので食べましょう。ね、陛下♪」

「わぁ〜!!ゆーりんの手作り!!食べるーー!!」

ぱぁっ
ぱたぱた…♪

「(また耳と尻尾が見えた気が…!! ) 」

これが人々が恐れ、冷酷非情の狼陛下と呼ばれている人とは誰も思わないわよね〜などと思いながら夕鈴はお弁当をひろげた。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「お味はどうですか?陛下。」

「とっても美味しいよ!!やっぱりゆーりんの作るのはどれも最高だね♪」

「/////////あ、ありがとうございます。フフッ♪」

甘々なんだから!!と思いながらも美味しいと言ってもらえて嬉しくないわけがない。すぐに顔に出る夕鈴を愛おしく黎翔は見つめていた。

「我が妃は本当に愛らしい…。では、次はこちらをいただくとしよう。」

「えっ!?へい……んっ…。」

「夕鈴…。」

「ちょ…んっ…。ま、待って下さい!!せっかくお花見にきたんですから、綺麗な桜を堪能しましょう!!ねっ!?////////」

「あぁ。桜はとても綺麗だ。だが私は桜よりもこちらの花を堪能したくなってな…。」

「///////でも、へい…んんっ!!」


真っ赤になって噴火しそうな兎と愛しい花を愛でる準備に入った狼。


二人きりのお花見の行方は??



おわり


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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

一巡目【夏】  さくらぱんcolor

「舟遊び」 


煌く川面を、滑るように一艘の小船が進む。

「夕鈴……どう?  
舟遊びの感想は?」

私の瞳を面白げに見つめて、
訊ねてくる陛下。


「船には、はじめて乗りましたが……
結構、揺れるのですね。
でも、楽しいです。」

陛下に応えながら、
私は、水辺の景色に目を奪われた。

船べりに捕まり、水面に手を浸けると
冷たい水温を、直に感じて気持ちがいい。

水面にキラキラと、進む船の波の筋が出来た。

船頭の漕ぐオールが、水滴を弾きながら、
小さな虹を作る。

滑るように船を進ませる様は、とても楽しい。

いつも岸から眺める景色とは違い、
目新しく美しい景色に、私の心は弾んだ。


「あっ……陛下、見てください。
あそこに、鴨の親子がいる。
カワイイですね。」

「本当だ。
……かわいい。」

ジッと私を見つめて、
陛下は静かに微笑んでいる。

「陛下、鴨を見てないのに
カワイイだなんて……
嘘つきです。」

私は、頬を膨らませて
嘘つきな陛下に拗ねてみせた。



「心外だな…見てるよ。
ちゃんと、見てる。」

「鴨を見ている夕鈴を見てる。
凄く、カワイイ。」

「……えっ。」

私をずっと見ていただなんて……
まったく気付かなかった。

私は、恥ずかしくて、
慌てて視線を 水面へと落とす。

子供のように、はしゃいだ様子を一部始終。
陛下に、見られていただなんて……

両袖で、赤く染まった顔を隠すが、
隠しきれなかった。

ふいうちの陛下の言葉に、
私は、ひどく動揺する。

ドキドキと……胸の動悸が収まらない

「ほんとに、夕鈴は、カワイイなぁ。
……見ていて、飽きない。」

向かい合う陛下が呟く。

陛下は私の様子を見て
さらに、楽しそうに笑うのだった。

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1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

一巡目【秋】  さくらぱんcolor

「ふわふわりん。‐素敵な日曜日‐」



手を伸ばせば
届きそう……
綺麗な秋の空

ポッカリ
浮かんだ
白い雲が浮かぶ

眩しさを無くした
太陽が、
木漏れ日から揺れる

キラキラ…リ☆




隣で
気持ち良さげに眠る
あの人の

漆黒の前髪が
爽やかな秋風に揺れて

私の肌を
くすぐって
おかしくなるの

……何だか
幸せで
微笑みが止まらない。



……ふわふわりん


ほんの少し
冷たい風に晒されて。

君がギュッと、
抱き締めてくれるから


……ふわふわりん


あなたの体温が、
気持ち良くて……
なんだか、
ふわふわり……

……ふわふわり。

ぴったりと
寄り添った熱が、
私を甘く溶かしだす。

「好きだよ」と、
呟いた寝言に
ハートが、キュンとする。

微熱が出そうで……
どうしよう。

……ふわふわりん

なんだか。
とっても……ふわふわり。

気持ちが、ふわふわ
落ち着かなくて……

身じろいだ瞬間
あなたに、抱き締められて
kissされた。

……ふわふわりん。

あの空に浮かぶ
雲のように
どこまでも……

……ふわふわり。

いつまでも
あなたと、kissしていたい。

素敵な日曜日。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

一巡目【冬】  さくらぱんcolor

「曲がり角」

木枯らし吹く
寒い朝。

「きゃっ……!」

本来なら私は、曲がり角を折れ、
政務室へと向かうはずだった。

ところが運悪く、向こうから来た人物に
ぶつかりよろめいた。

「危ないっ!」

とっさに、受け止めてくれた逞しい腕に助けられた。

ぶつかったのは、陛下。
陛下が私を支えてくれて、無事
事無きを得る。

「陛下。
ありがとうございます。
助かりました。」


「……驚いたよ。
気をつけてね……夕鈴。」

「ぶつかったのが、私で良かった。」

……チュッ。

…………!

次官・侍女のいる前で
陛下の甘い演技が、始まってしまった。

陛下に、頬に口付けられて、 私は焦りだす。
顔が火照って真っ赤になった。

私は慌てて、真っ赤になりつつ
陛下の腕から脱出をしようと試みた。

もがけば……もがくほどに、
ぎゅうぎゅうと陛下に抱きしめられて、
陛下の腕から逃げられない。

「私は、もう大丈夫ですから……
陛下、離してくれませんか?」

「……離したくは無いな。」

「せっかく我が妃のほうから、
私の胸に、飛び込んでくれたのに……
……もったいない。」

Σ!
陛下、面白がってる!!


「陛下っ!!
離してください。」

「夕鈴、離さないと言ったら?」

「Σ…………!」

……ピシリ。
私のお妃スマイルが、凍りついた。

陛下のいぢわるっ!
は――な――し――て――!

侍女達に、分からぬように
心の声を最大にして
私は、陛下に抵抗した。

結局、李順さんが陛下を探しに来るまで
私たちの曲がり角の攻防戦は続くのだった。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

二巡目【春】  おりざcolor

君はどこへいったのだろう?

後宮の一室、君の笑顔に迎えられるとばかりおもっていたのに。
部屋の主は不在で、私は少なからずガッカリしてしまう。

明るいテラスへ目を向ければ
庭は陽光に輝き、春の風がかぐわしい花の香りを運んできた。

開け放たれた扉がカタ、カタと小さく震える様をみるにつけ

『――君ならきっと。このうららかな陽気に誘われて
庭へと歩を踏み出したのだろう』と想像され、私はクスリと笑ってしまった。

案の定。

舞い散る薄紅色の花びらと戯れる
私の愛しい妃の姿。

私はそっと後ろから近づき
花の精を腕の中に閉じ込めた。

「…もうっ!」

恥じらいながら、小さくもがく

君の精一杯の抵抗すら、甘美。

「夕鈴、可愛い――」

抱きしめた君の髪が風で舞って、くすぐったい

「ちょっと、ここは寒いね…」

それは、抱きしめる口実なんだけど
君は素直におとなしくなる。


ああ、春の香りがするな

何もかもが、暖かいね。


春の陽光のような君と――このままずっと。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

二巡目【夏】  さくらぱんcolor

「えいっ!
とりゃあっ!」

ひゅるひゅるる~~……ぽとん。

「お妃ちゃん
違う違う!
こうだって!」

シュッ!
パスン☆

夕鈴から、遠く離れた木に、浩大が投げた飛び道具が刺さる。

パチパチパチパチ…

「スッゴいわね!
さすが、浩大!!」






「夕鈴、
何をしている?」

背後から、急に呼ばれた声に、
夕鈴と浩大は、ギクリとした…

そろりと振り向いたら、
そこには陛下の姿…

「陛下…」

「夕鈴.。
ここで何をしているの?」

「あっ
……あの。」

「いつも守られてるばかりじゃ
イヤなんで……」

「少しは最低限。
自分の身は、自分で守りたいなぁ~と」

陛下の少し寄せられた眉。
冷ややかな視線が、浩大に投げかけられた。

「……浩大っ!」

「浩大は、関係無いの。
私が無理にお願いしたのよ!」

浩大をかばうように
陛下の視線から隠した。

……蒸し暑い。
夏の木漏れ日が、夕鈴の目を射る。

こんなに暑いのに。
この場所だけが、冷たかった。

「……浩大!
お前は、知っているはずだ。」

「夕鈴には、そんな知識いらない。」

「 君は、そんなことは、
覚えなくていい…」

思いがけず静かに呟いた陛下に、
夕鈴は抱きすくめられた。

ギュッと抱きしめられて、
身動きが取れない。

苦しげに呻く陛下の小さな囁き。

「君は、僕が守るから…
君は黙って守られていて…」

――君は、知らない。
抵抗する術を知り、無残にも殺された妃が何人も居ることを……

もう大事な人が、殺されるのは見たくない!
母のように……


ギュッと抱きしめる陛下の大きな背中が、
少し震えているような気がして・・・
夕鈴は何も言えなくなった。

「僕が君を守るから……
絶対に守るから……」

何も言えなくて……
でも、何かを伝えたくて……

二人、言えない想いが、
胸に広がった。

それ以上、追求できない
夕鈴が、折れた。

「……ゴメンナサイ。」

小さく呟いた夕鈴の言葉が、
静かな森に響いた。

ぎゅっと抱きしめられたまま……
森に夕闇が迫る。

焼けた空が静かに光っていた。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

二巡目【秋】  さくらぱんcolor

「ゆーりん♪
ただいまっ!!」

いつもより早い時間の帰宅に
夕餉の仕度もできていなくて……
夕鈴は、焦った。

「お帰りなさいませ。
今日は、お早いお帰りですね。」

「今日は、仕事が早く終わったんだ。
早くかわいいお嫁さんの顔が見たくて……
まっすぐ来ちゃった。」

陛下のお仕事が早かったのは、良い事なのだけれど。

こう、ぎゅうぎゅうと
後ろから抱きしめられいて
髪に陛下の顔が押し付けられるのは、気が気じゃあない。

まだ、湯浴みもしていないのに
くんかくんか・・・髪の匂いを嗅がれて・・・

ううっ……
恥ずかしい。

こんな時には陛下って、
ホントに小犬っぽいなぁ。・・・などと思う。

「陛下、
(ぎゅっと抱きしめるの)もう、いいでしょう?
離してくださいませんか?」

居心地悪そうに夕鈴が
離れようと身じろぎしたら……

「ゆーりん。
なんだか甘くて、いい匂い。

……これは、なんの香りかな?」

耳元で、囁く陛下の声。
熱い吐息が夕鈴の首筋にかかり、
ひゃん。
彼女は、首をすくめた。

「陛下、くすぐったい。
離し…て……」

その匂いを確かめるかのように、
ますます陛下は、
くんくん…と小犬のように夕鈴の髪を嗅いでいく……

陛下は、まったく離してくれそうになくて……
彼女は困ってしまった。

真っ赤な顔で、ジタバタ……と、
ささやかな抵抗をするも。

緩やかなくせに、はがれない。
抱きしめられているから、
まったく身動きが取れなくて口惜しい。

“夕餉の支度が整うまで、一人にしておいてくれませんか?”
さきほど、女官長にお願いした言葉がよみがえる。

……先に、人払いしておいてよかった。
今更ながらに、安堵した。

自室には、陛下と夕鈴しか居なくて……
こんな小犬な陛下を見られるわけにいかない。

侍女が一人でも居たら、こんな困った状況にはならなかったなどと
彼女は、考えもしなかった。
しばらくして、陛下が口を開いた。

キラリ☆
イタズラめいた紅い瞳が煌く。

「分かった。
君が今日。
どこに居たのか当ててあげよう。」

「当たったら、なにかご褒美くれる?」

「いいですよ。
当たったらデスネ……」

やっと離してくれたことに、ほっとして、
にこやかに夕鈴は答えた。

それが、陛下の策略とも知らずに……



***


「今日、君は後宮の奥。
金木犀の木の下に居たんだろう?
しかも、髪に残り香がうつるほど、長く居た。
……当たり?」

「はい。
よく当てましたね。
午後からは、金木犀の木の下で読書をしていたんです。」

「秋の庭の木漏れ日が、とても過ごしやすくて
つい長居をしてしまいました。」

にこやかに応える夕鈴に、
黎翔は詰め寄った。

「当たったね。
んじゃ……
僕に、ご褒美 頂戴。」

「待って……陛下、 私。
何も、あげられるもの持ってない。」

「えーー・・・
僕、ご褒美欲しいなぁ。」

残念そうな小犬の耳がしょげた。

「じゃ……
明日は、陛下のために夕餉を作ります!
それでいいですか?」

「……それも、いいけど。
僕は、コレが欲しいな……」

陛下に、抱き寄せられて……
夕鈴は、頤を捕らわれた。

上向かせられた夕鈴の下唇を、陛下の親指がなぞる。

「えっ?
……えっ?
唇?
ええっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ?」

「約束だから……
遠慮なく、貰うよ、夕鈴。」

煌き…近付く、狼の瞳。
その紅き瞳には、もう小犬の色は無くて……

「陛下っ…ダメ「ん…」」

「ンンっ!「ぁ……」」

「……甘いな。
君に酔いそうだ……」

奪われた唇に、口移しで移された陛下の熱。

抗えぬまま……
妖しく溶かされていく。

――秋の夜長。

夕鈴の髪から零れ落ちた、
星屑のようなオレンジの花。

甘い香りが、ふわりと夜風に攫われ消えた。

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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

二巡目【冬】  ひしょきらcolor

白陽国を木枯らし一番が吹きぬけたその日の夕方。
国王・珀黎翔は、木の葉もすっかり散った後宮の庭園にいた。
予定よりも随分と早く政務が終わったので後宮へと足を向けたところ、
「お妃様でしたら、庭園を散歩中でございます」と女官に教えられたからだ。

今日は、晴天とはいえ風が冷たい。
後宮に戻ったら、温かいお茶を淹れてもらって2人でゆっくり過ごそう・・・
そんな事を考えながら、黎翔は最愛の妃を探して庭園へと足を踏み入れた。


「夕鈴、こんなところにいたのか。」
ようやく見つけた夕鈴は、西の端に位置する四阿で、くつろいでいた。
「陛下!お仕事は大丈夫なのですか?」
「思いのほか早く終わってね。おかげで今日は、君とゆっくり過ごせる。」
夕鈴の隣にストンと腰を下ろし、
官吏達には決して見せる事のない甘い笑顔を向ける。
(相変わらず甘いんだから・・・)と照れながら、夕鈴もふわりと微笑んだ。

「―――それにしても、どうして此処に?
 今の時期、景観的にちょっと寂しくない?」
黎翔が訝しがるのも無理はない。
この辺りは冬場は木の葉が散った樹木が立ち並ぶだけで、
散歩に向いているようには見えなかった。

「確かに今の時期、お花も咲いていませんしね。
 でもたまには、静かな場所で色々と思いを巡らせるのも楽しいですよ。」
そう答えながら、夕鈴は、ふふ・・・と笑った。
「へぇ・・・どんな事を考えていたの?」
「うまく言葉にできないけど・・・これまでの色々な事を思い出していました。
 ―――それから、今の私はなんて幸せなんだろう、って。
 去年の今頃は、貴方の側に戻ってこれるなんて、思いもしなかったから・・・」


一瞬、穏やかな笑顔の影に「あの時」の悲しみが垣間見えた気がして、
黎翔は心臓をえぐられるかのような痛みを覚えた。
1年前の「あの時」。
これ以上、夕鈴を危険な目に遭わせたくない。
その一心で、断腸の思いで手放した・・・つもりだった。
しかし、その決断が逆に彼女を傷つけていたのかもしれない―――

居た堪れない気持ちになった黎翔は夕鈴を引き寄せ、ぎゅ、と強く抱きしめた。
「・・・・・・陛下?」
「あの時は君を傷付け、辛い思いをさせてしまったね・・・本当にごめんね。
 君にはいつも笑っていて欲しい、と思っていた筈なのに・・・」
「・・・・・・・・・」


しばしの静寂が2人を包んだ後。
「―――陛下、それは違いますよ」
堅く結ばれた紐を解くように、夕鈴がそっと黎翔の腕の中から顔をあげる。
「貴方は私を安全な場所へ匿ってくれた。そして頃合をみて迎えに来てくれた。
 その間に私は、臆病だった自分と向き合うことが出来た。
  ・・・ただ、それだけの事でしょう?」
そう告げる夕鈴の表情には悲しみなど欠片もなく、幸福感が溢れていた。

「夕鈴・・・まったく、君は―――」
ぎゅ、ともう一度強く夕鈴を抱きしめて。
「ありがとう 愛してるよ」
ただ一人だけに届くよう、黎翔は、妃の耳元でそっと囁いた。


「寒くなってきたね。戻ろうか、後宮に。」
「そうですね・・・そうだ、帰ったらお茶にしましょう?
 少し前に女官さんに教えてもらって作った柚子茶が、
 そろそろ飲み頃の筈ですから。」
「君の手作りか。それは楽しみだな」

―――寒い季節も、君と2人なら暖かい。
黎翔は穏やかな笑顔で夕鈴の手をとり、スルリと自分の指を絡める。
互いの手の温もりを感じながら、2人はゆっくりと帰路についた。

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1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

三巡目【春】  さくらぱんcolor

水面に映る空の色

はらはらと
舞い散る桜が
水面に薄紅の花筏を作る。

薄紅と青い空を写し込み
春を彩る。

「夕鈴。
やっと、見つけた……」

「陛下」

「侍女に聞いても、誰も知らないと……」

「探したよ。
まさか…王宮の外堀にまで
足をのばしてるとは、思わなかったぞ。」

「申し訳ありません。」

「そこは(刺客に狙われやすいから)危ないから、
早くおいで……」

「はい、陛下。」

夕鈴は、名残惜しげに一度振り向き…

陛下の居る位置より高い場所から、陛下のもとへ…と、飛び降りた。


……ポスン

鮮やかに染まる桜の仙女のように
この国の国王の腕の中におさまった

稀有なる狼陛下の花嫁。

ただ唯一、狼陛下を恐れず。
微笑みを絶やさぬ。
唯一の寵妃。

今も昔も変わらない。

お互いの温もりが、愛の絆。

「どうして…ここに?」

「昔を思い出しておりました。
下町に住んでいた頃の……」

それを聞いた黎翔の幻の耳が、垂れた気がした。

「…下町(じっか)に、帰りたいの?」

ウルッとした小犬のような瞳には、昔から弱い。

「帰りたいわけではありません、ただ懐かしいなと……」

ますます元気が無くなる小犬陛下に、夕鈴は苦笑する。

「そんな顔をしないでください。
私が、貴方から離れるわけがないでしょう?」

「追いかけてきたんですよ?
貴方を!」

「……ああ。
そして、二度と離れない。
離さないと誓った」

「私は、今までも、
これからも…」

「狼陛下…
貴方の唯一無二の妃です!」

「……愛しております。
黎翔さま。」

「私もだ!
離れるな……夕鈴。」

啄むような口付けに
春の花が揺れる。

巡る季節が移り変わろうとも……
愛しあう二人の心は、変わらない。

離れた時があればこそ
……もう離れられない。

二人、春の日溜まりに生きて……

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

三巡目【夏】  おりざcolor

緑滴る川縁。

狭い山道を歩くのに手を引かれだなんて。
まるで子供みたいで恥ずかしいのに。
陛下ときたらお構いなし。

「陛下、まだ遠いんですか?」
「もうちょっと」
がんばって。と笑いながら、陛下はゴツゴツとした石の上をスイスイと渡る。

「…あれ? 道が――」

突きあたりは山肌で、道が途切れている。

ふと脇を見ればつるの絡まった古い道標があって、
指し示すところ、沢づたいの側道は渓流を渡った向こうへと続いているらしい。

「ここは川を渡るんだ。
なんだか飛び石みたいだね。
――足元が悪いから、ゆーりん、気を付けてよ?
…なんなら、抱えてゆこうか」

そう言われた途端ぐらりと態勢を崩してしまう。

(っ…!)

ピン、と腕が伸びたと思ったら
こんどは長い腕が私の背中に巻き付いて
あっという間に腰を支えられて。

「――へーか。
…近いです」

「そう?」

萌いづる若緑の葉ごしにチラチラと陽光が踊り、
陛下の瞳の色は万華鏡のように色を変える。

そんなに近くに陛下のお顔があるというだけでも恥ずかしいのに。
汗ばんだ背中に手を回されて、強く抱きしめられると
もうどうしていいのかわからない。

「そんなにくっつくと、暑くて
気持ち悪いんじゃないですか?」

「気持ち悪い―――?」
キョトンとした表情で見返される。

「だって、私汗かいて、ベタベタで…」

「――そんなことないよ?」

陛下はそう言ってくださるけど、きっと気持ち悪いと思う。
思わず手を振りほどこうとしたのに
陛下は逆に指を絡めてもっときつく握り締めた。
「だ、…やっ!」

もう片方の腕を回されて
二人は密着して…首筋にさらりと陛下の黒髪が触れる

「ダメなの?」

吐息がかかる。
陛下が私の首筋に顔を埋めて…なんてこと――!?

「ダメ、とかなじゃくて。
ぜったい、汗臭いですから!」

「君はいつだって
よい香りがする」

陛下は嬉しそうに、ますます密着する。

「…は、ず…かしいから
――離しーてーくーだーさーーーい…!」

ジタバタ必死に抵抗すればするほど、陛下は面白がってますます…

(ぜったい、やりすぎてる――この人っ!!)

その時。
「陛下、お戯れは、たいがいに―――」
背後から李順さんの声がした。

陛下私を抱きかかえたまま

ボチャン

と川に落ちた。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

三巡目【秋】  さくらぱんcolor

「…痛いっ!」

「ちょっと……
李翔さん、またですか?」

「見せてください!」

心配そうに、駆け寄ってくる
僕の可愛いお嫁さん。

「……血がでてる。
大丈夫ですか?」

少し顔を青ざめて
大きな瞳を潤ませる彼女に
僕は大丈夫だよと笑ってみせた。

夕鈴は、僕の手首を取ると、
血の出た指先を口に含んだ。

チュ…

指先に、
少し吸われた感覚と
柔らかな唇の感触。

口に含んだ血を
吐き出しながら……

「これで良し!
もう……李翔さん、気をつけてくださいね。
これで何回目ですか?
栗のイガに指を刺すの…」

「意外と(へーかは)、不器用なんですね。
栗拾いのお手伝いは、
もう……いいです!」

「さっきから、カラスが狙っている
お弁当を守りながら……
あそこで休んでいてください!」

「えーー…!
もう、刺さないよ!
……もっと、君と栗拾いしたいな。」

「そう言って……
何度目ですか?」

「夕鈴…
まだ、3度目」

「いいえ、
6度目です!」

「刺すたびに、
治療と称して
私を呼ぶんですもの」

「さっぱり栗が拾えません!

このままじゃ……
栗ごはんも
栗饅頭も、つくれません!」

少し膨らましたほっぺを赤くして、
僕のお嫁さんは、そう言った。

「…でも、夕鈴と一緒の栗拾い。
楽しいんだよ……」

「もっと、栗拾いしたいな……」

シュンと……
垂れた耳と尻尾を出して、
潤んだ瞳で夕鈴を見つめた……

君がコレに弱いと
知っての
僕のとっておきのお願い

しばらくして……

ふぅ……
小さなため息。

「しかたがない人ですね。
わかりました。」

「では、もう少し栗拾いを楽しみましょうか。
今度は、李翔さんが踏んだイガを
私が拾います。」

「この籠が、いっぱいになったら、お昼にしましょうね!」

「……それで、いいですか?」

「ありがとう!
夕鈴!
僕。
一生懸命、頑張るよ!」

「夕鈴!
大好きっ!」

たちまち、ピンと元気になった耳と尻尾を、
ブンブンと振り回して、
僕はぎゅっと、夕鈴を抱きしめた。

「く…くるし……李翔さん。
離して……」

しばらくしてから、離れると、
ゆでだこのようになってしまった真っ赤な夕鈴。

「早く栗拾いを終わらせましょうね!」

照れ隠しのつもりか……
両腕をブンブン振り回す夕鈴の籠から、
拾ったばかりの栗が飛び散った!

「夕鈴っ!
栗が……「あっ、きゃあっ!!

その分だけ余計に、
僕らが栗拾いをしたのは、言うまでもない。

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7 【鍵】 今宵、月が消えるまで

今宵、月が消えるまで……1 さくらぱんcolor

春・夏・秋・冬  大人風味

DSCN4747-700-1-50.jpg
(撮影・さくらぱん)

「……ゆうりん」

囁かれた夢の中。

“ギシッ……”
軋む寝台の傾きに、目が覚めた。

目の前に、月明かりに浮かぶ人影。
見下ろす紅い瞳とかち合った。

「……へーか?」

まだ寝起きの頭は、まだ状況が飲み込めていなくて、
舌っ足らずな呟きで、見下ろす人の名を呼んだ。

「起こしてしまったか?」

優しく揺り起こすような囁きに、夢でないことを知る。
何度、一人で眠れぬ夜を過ごしたことだろうか?

臨時花嫁だった頃の自分と
この国の国王の本物の妃となった自分。

何一つ過不足なく変わらない生活ではあるが、
陛下との距離は、劇的にかわった。

愛する人との心の距離。
手に入れるはずが無かった……彼の心。

「へーか。
おかえりなさいませ。」

眠たげにではあったが、この国に捧げた夫を
私は、ふわりと笑って労った。

「夕鈴、ただいま。」

チュッ…

軽く触れた唇から
零れた吐息。

「……ただいま。
僕の奥さん。」

優しく笑みかえしてくれる
愛する人を私は、優しく抱きしめた。

「おかえりなさいませ。」

「すっかり目が覚めたみたいだね。
夕鈴、お月見しようか?」

「……お月見ですか?」

まん丸な瞳で不思議そうに見つめる私を、寝台に残して……
陛下は、寝所の窓を開け放した。

冷たい夜気と共に、冴えた望月。
いつもより金色に見える綺麗な月が輝いていた。

「綺麗なお月様。」

思わず呟いた言葉は、陛下の耳に届いた。

「今夜は、満月なんだ。
さっき気付いてね。」

「起してしまったのは、申し訳なかったが……
君と一緒に見れて嬉しい。」

月明かりに影になって、陛下の表情は見えないけれど
弾むような明るい声に、嬉しげに微笑む様子が浮かんだ。

私は、陛下の言葉に嬉しく思う。
寝台にまで伸びる月明かり。
陛下の言葉に、自然と私は笑みが零れた。

いつの間に……こんなにも、夜が涼しくなったのだろう?
まだ残暑が残る昼間と違い
冷たい夜気に首をすくませた。

「ああ……ごめん。
寒いよね。
もう、窓を閉めるよ。「待って……」」

「せっかくの美しい月。
もう少しだけ、陛下と見ていたいです。」


…………
……………………


その言葉に、ふわりと微笑む気配。

近付く陛下が、寝台の私の隣へと滑り込む。
寝台で寄り添い
ぴったりと陛下は、身を押し付けてきた。

「寒くない? 夕鈴。
これなら、二人とも温かいね」

「はい」

寝台で二人。
真夜中に、窓から見える美しい月を見上げた。

今宵、貴方のぬくもりの中で……

……続く



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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

三巡目【冬】  よゆままcolor

ハラハラ・・・・・・白い妖精が空からそっと降りてくる。
そして地上でクルクル楽しげに回っている。

綺麗で清浄な世界。
心の中までも清められるよう。


ここでこの季節を体感するのも2度目。
臨時妃も随分と長くなってきて、最近ではさすがに陛下の言動にも慣れてきた・・・はず。

私も少しはプロ妃になっている、つ・も・りっっ!!

夕鈴は窓の外の景色をボンヤリ見ながら、手の中で少し冷えてきたお茶を一気に飲み干す。
お昼前にポツリポツリと空から雨粒が静かに零れ落ちていたが、
それも 直ぐに白い雪へと変化していた。
そして茶色の地はすでに白く変わっていた。


「ここまで積もれば、寒いはずよね・・・・。」


「そうだな、夕鈴・・・・確かに雨が雪に変わったから、急に冷えてきたようだな。」

夕鈴はハッとして後ろを振り向く。
独り言のはずなのに、自分の言葉に返答があったのだから。


「まぁ、陛下、お越し下さったのですね。」
「そなたの顔が見たくなってな。」
「政務はよろしいのですか??」
「政務なんぞよりも、君の方が大切だ。」

甘い言葉を囁かれ、ドキンと胸の鼓動が跳ねた。

平常心!!
兎に角平常心よ!!大丈夫、私はプロ妃!!!

自分に一生懸命に言いきかせる。
そして深呼吸して何事も無いような表情を作る。

でも陛下は更に畳み掛けてくる。

「夕鈴、寒くはないか??」
「いえ、大丈夫です。」
「私は寒いが。」
「はい??」
「だから・・・・・・。」

ニヤリと口角が上がった。

これは・・・・・・このさきは。

どうなるかなんて、何となく予想はつく。
でも逃げる・・・・・事なんて出来ない。

だって陛下の妖しい紅玉の瞳で、じっと見つめられると身動きが取れなくなる。



「キャッ!!」

逃げる暇なく、後ろから抱きすくめられた。

そして、さっきまで寒かったはずの身体もポカポカしているような気も・・・。
体温が少しずつ上昇してきているのが自覚できる。

「平常心!!
平常心!!!大丈夫!!!!」

小さな声で唱えながら、自分の体温を下げようと試みる。
でも一度上がった体温は簡単には下がる筈もなく、
それよりも更に上がっていく。


「クスッ。」

耳元で笑い声が聞こえてきた。

「夕鈴・・・・その愛らしさが僕にとって最高の癒しだよ。
いつまでも初々しい妃でいてね。」


囁かれる甘い言葉。


ダメっっ!!!
もう我慢の限界ィ~~~!!


そのまま床にへたり込んで私を支えてくれたのは、
言わずもがな陛下である。


「夕鈴、まだまだプロ妃は遠いようだね。」
「はぁぁぁぁぁ~~~~~~~。」

私の深い深いため息が、侍女さんたちも誰もいない二人きりの部屋に響いた。
でも二人でいられれば、寒い冬すらも暖かい春へと変えることが出来ることを二人は肌で感じていたのだった。


二人の春はもう、すぐそこ?!



終わり。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

四巡目【春-1】  さくらぱんcolor

ぽとり……
ぽとり……と

麗らかな日差しに溶ける雪解けの水が、
屋根から、落ちる 春浅いとある日。

窓から望む景色は、一面銀世界で、
澄み切ったパステルブルーに輝く空は、
見渡す限り雪原の野原を宝石のごとく輝かせていた。


私は、はやる心を抑えて後宮の自室を飛び出した。





キラキラ……と輝く世界。

サクッと踏みしめた雪は、小さな足跡をひとつつけた。

小さな手で、雪兎を作った。
大きくて赤い目のへーかの兎
小さくて茶色の目をした私の兎

2つ作って、仲良く並べた。
長く一緒に居られるように願って、
日陰の誰にも見つからない場所に仲良く寄り添い並べた。

かじかむ指先を、吐息で温める。

まだ、春遠い…
晴れた雪の庭……

仲良く並ぶ雪兎に、
私はニッコリと笑いかけて、その場を立ち去った。

煌めき招く  春の池へと……

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

四巡目【春-2】  さくらぱんcolor

屋根から落ちる
不規則な水音。

溶け始めた氷柱と
晴れ渡る 青い空

暖かな日差しは、
久しぶりのことで、
僕は、暖かな日差しに君のことを思い出していた。





「夕鈴!」

春の陽だまりのような君の笑顔が見たくて、
足を延ばした自室には、君は居なくて……

雪に、残された小さな足跡を辿り、僕も君と同じ庭へ出た。





麗らかな春の日差し。
こんな陽気は、本当に久しぶり。

君の小さな足跡を辿り、君と同じ道を辿った。



途中、小枝の影に2つ並んだ雪兎を見つけた。

“君が、作ったんだろう?
夕鈴”

君が、楽しげに庭で遊ぶ姿が、浮かんで……僕は微笑んだ。

「君を作ったご主人さまは、どこにいるの?」

答えるハズもない、
雪兎に、僕はそう問いかけた。

足下には、小さな足跡が、一人分池へと続く道へと伸びていた。

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プロフィール

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