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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】28 さくらぱんcolor

どんどん、この場の緊張感が増していく。
几鍔は、冷たい汗が、背中に伝うのが分かった。

「そこをどけ!
私の邪魔をするな!」

陽炎がユラメク……

……面倒だな。
(コイツ……いつも、こうなのか?)
普段の余裕ぶったへらへらした感じではなく、明らかに余裕の無い様子の李翔に、几鍔はたじろいだ。


「――――っ!」

夕鈴が、居なくなった途端に、不機嫌さを隠そうともせず……
彼女をまだ追うとする李翔の行く先を几鍔は、塞いだ。

“そこをどけ”と、
冷たい獣じみた笑いを刻む李翔に、几鍔は自分の勘が正しいことを知る。

“コイツは、胡散臭さ過ぎる”

まだ日が沈むには高く、夜になってなどいないのに……
急速に周囲が凍りつくように、肌寒くなっていった。

すべては、李翔のせいだった。

……ヤバいな。

下手な質問は、こちらが抜刀されそうな雰囲気だった。
王宮掃除婦の上司?とはいえ、帯刀しているからには、それなりに剣の心得はあるのだろう。

しかし、この殺気。
本当に、ただの管理職なのか?

俺たちに、正体を偽っている?
――――何のために?
夕鈴が、妃の身代わりの仕事と何か関係あるのか?

浮かぶ疑問は、目の前の剣呑さに霧散していく。
知りたいことは、山ほどある。
だが、この男は、素直に応えるだろうか?


とても短い時間なのに、なんだか凄く長い時間睨み合っていたような……
几鍔には、分らないことが多すぎた。

王宮での謀など、知りたくも無いし、知らなくても良かった。
だが、それが身内が絡むことなら、また話は別だった。
何も知らず、踊らされている自分に腹が立っていた。
知らなくてはならない何か。
まだ糸口さえ見つからないこの事件の謎。

それは、なぜか目の前のこの男が握っているような気がした。

……ここは、単刀直入に聞いてみるか。
几鍔は、李翔に対し腹をくくった。






*****




「李翔さんでしたよね。
アイツ(夕鈴)に何をさせてんですか?」

「――――何を知っている?」

「夕鈴から、聞きました。
王宮に居る本物のお妃の身替わりだって……
そんなヤバい仕事なら、下町に返してくれませんか?」

「一応、アイツは俺のシマのガキなんです。
アイツには、大事な家族が居る。」

「アイツには、弟や父親。
家族が居るんです。」

「よく知っているよ。
彼女が大事にしているものを。

――夕鈴が辞めたいとそう言ったのか?」

「いいえ。
アイツは、俺の話なんて聞いちゃいねえ……
辞めるどころか、王宮に戻りたいとさえ言いやがった」

「それどころか変な正義感で、
俺の邪魔をするし……」


……続く
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ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】29 さくらぱんcolor

「金貸しくんの邪魔?

……ああ、そういえば」

「金貸しくん。
王宮で行方不明になった夕鈴が、
ココ(下町)に居る説明をしてくれないかな?」

今まで、几鍔など眼中に無かったといった風に、
李翔は初めて几鍔に興味をしめした。

「几家の女家長が、行方不明と聞いてる。
……もしかして几家は、脅されたか?」

「王宮に信用ある几商店が、
(王宮)御用達の資格を剥奪されかねない大問題だね。」

「~~~~っ。
オイ、何が言いたい」

「王宮の禁域と言われる場所から、夕鈴が消えた
君たちが、実行犯なのだろう?」

「こうも鮮やかに、夕鈴を連れ去って……
まさか、下町に居たとは私も驚いたよ」

「王の妃が住む禁域から、
彼女が連れ出されたこと、君が思うより罪が重いってこと知ってるか」

「夕鈴が、報告したんですか?」

「いや……彼女からは、何も聞いていない。
私を頼らないところは、夕鈴らしいが……」

「我々がどれだけ心配したのかを
彼女は分っていない。
早く王宮に、連れ戻さないと……」

「でも、金貸しくん。
いろいろと調べはついている。」

「この事件、几商店が絡んでいると
報告は聞いた」

「私の協力をしてくれれば、悪いようにはしない。
協力してくれれば……この件に几商店が係わったという事実は、私の胸にしまおう。

几家を脅している奴は、誰だ?」

静かな語り口だが……否やを言わせぬ物言い。

「あんた、いったい誰なんだ?
本当にただの役人なのか?」

底の知れない情報力と分析力で、
すでに几家は王宮から目を付けられていることを几鍔は知った。

「王宮としても、禁域で誘拐事件が起こった醜聞など知られたくない。
この件は、穏便に済ませたいんだ」

几鍔の質問には応えず……冷酷無比な赤い瞳が、几鍔を見据えた。

まるで、蛇に睨まれた蛙の気分。
――最悪だった。

こちらの質問は一切通らず、一方的に筋書きがもう出来ていた。

“王宮御用達の店の誇り”が、几商店にまだあるならば……“協力してほしい”
柔らかな物言いながら否やは言わせない、こちらは素直に応えるしかない。

几鍔に、考える時間は必要無かった。
ただ、素直にコイツに返事が出来なかった。

「アイツは、やっぱり本物のお妃さまの身替わりの仕事をしているんですか?」
「知ったからには、アイツはこの仕事を辞めさせます」

「彼女は、王宮に連れ帰す。
もう王宮に無くてはならない存在だ。
王宮に返してもらう」

「その為には、この事件を解決しなければ、夕鈴は帰らない。
わざわざ自分から危険に飛び込んでいくような娘だ」

「君にしたって、幼なじみを危険な目にあわせたくはないだろう?
夕鈴の幼馴染だから、協力すれば見逃してやる。
そちらにとって、悪い取引では無いと思うが……」

冷ややかな雰囲気を纏いつつ、李翔は譲らない。
こちらも譲る気はなかった。

“夕鈴を王宮に戻したくない”

几鍔は、禁域から夕鈴を連れ出した後ろめたさもあり、強く言えない。
…でも当初の予定と狂い“狼陛下の唯一無二の妃”ではなく“自分の幼なじみの夕鈴”を下町に連れ戻しただけだ…

何故こんなにもコイツは、夕鈴にこだわるのだろうか?
夕鈴が、無くてはならない存在?
幾らでも換えのきく、ただの掃除婦だろう?
本物のお妃様じゃあるまいし。

――アイツは俺に、本物のお妃の身替わりだと言ったんだ。
アイツが俺に嘘なんてつかねえ……
俺は、それを信じる。

こんな奴を信じて、王宮に連れ戻されたら
またアイツは俺の目の届かないところへ、行っちまう。

アイツは、俺が面倒みないと……
正義感が強くて
馬鹿みたいにお人よしで
自分のことより、他人のことに心砕いて……

自分だって、大変なのによ!
さっぱり俺の言うことを聞きやしない。
今だって……


キッ……と、片目だけの薄茶の瞳で、目の前の李翔を睨みつけた。

コイツは、はじめから気に入らねえんだよ。
いちいち夕鈴の奴、コイツを庇いやがって……

貴族なんかが、アイツをまともに相手するかって……

……馬鹿な女だよな。
結局、痛い目に遭わないと分からないらしい。

傷が浅いうちに、オレがなんとかしてやんないと……
几鍔は、瞑目すると…あきらめたような重い溜め息を吐き出した。

「オイ、金貸しくん。
聞いてる?」

物腰は柔らかく…
しかし、意志を曲げることを知らない“李翔”と名乗る男の言葉が、几鍔の癇にいちいち気に障る。

几鍔は、目の前のコイツのことが大嫌いだった。

……続く

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1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】30 さくらぱんcolor

夕鈴は、李翔から逃げるように、人通りの多い大通りに戻るべく、
手近な角を一つ曲がった。
この辺りは、先ほどより治安が良く、大きなお屋敷も多い。

現に、夕鈴の両脇には一続きの高い漆喰の壁が続いていた。
青空を覆うような立派な松の木が、塀から太い枝を伸ばし
通りに涼やかな木陰を作っていた。
相変わらず人は見当たらないが、貴族の屋敷が続く通りなど、何処もこんなものだろう。
閑静な通りに来て夕鈴は、ようやく安堵し、疲れを覚えた。

走ってきた脚を止めて、ふと振り向くと……
もう李翔さんと几鍔の二人の姿はココから見えなかった。

夕鈴は、来た方向に向かい、深々と頭を垂れた。
もう見えない李翔(陛下)に向って。

本当に心配かけたのだろう。
私を見つけて、すぐ抱き締めてくれた。

長いこと会えなかったかのように、懐かしさまで覚えた真摯な赤い瞳。
少しやつれた気がしたのは、気のせいではないよね。

……それでも、私はあの場から逃げた。
今、王宮に帰るわけにはいかなかったから。

夕鈴の両目から大粒の泪が零れ落ちた。

――陛下、ごめんなさい。
せっかく迎えに来てくれたのに――

王宮に戻ったら、狼陛下の花嫁を狙う、私の火の粉は払えない。
絶対に黒幕を見つけて帰るから。

そして必ず陛下の下へ帰るから……
だから・・・・待っててください。

ぼろぼろと……夕鈴は溢れる涙を止められず……
頭を垂れたまま、そこを動けなかった。

――――いや動けずにいるのだった。

*****



ーーわたし、何やってんのよ!

夕鈴は、俯いていた顔を上げて
袖口で、ぐいっと零れる涙を拭いた。

ーーこんな弱気じゃ、黒幕なんて突き止められないじゃない!
まだ私は、何も突き止めていないのに。

おばば様の行方も。
几鍔を脅した人物も。
狼陛下の花嫁を狙うこの計画の黒幕も、その狙いも。

「よぉしっ!
頑張るぞ!」

“パチーーーンっっっ!”

突然、静かな通りに響いた乾いた音。

夕鈴は、大きな気合の掛け声と共に、自分の両頬を
おもいっきり叩いた。

ジンジン……と、夕鈴の両頬が痛む。
叩いたせいで 赤くなった頬。
痛みのせいで少し涙が出た。

だけど、それは先ほどまでの苦しい涙じゃなかった。
夕鈴のハシバミ色の瞳には、涙の代わりに強い決意が宿っていた。

“いつも、どんな時も“花嫁”は、陛下の味方です”

昔、陛下と交わした約束が、ふいに頭に蘇る。
離れている今も私は、あなたの味方です。

また陛下の顔が浮かんで、苦しい涙がまた零れそうになった。
夕鈴は、今度は俯く代わりに、涙が 零れないように空を見上げた。

ーー青空に陛下の笑顔が、浮かんで消えた。
ツン……と鼻の奥が痛くなる。

見上げた空は、何処までも澄んで青く眩しかった。
眩しい太陽が、夕鈴の頭上に輝いていた。

ーー大丈夫。
きっと、うまくいく……

夕鈴は、なんだか不思議と勇気が湧いてくるのだった。



……続く

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momo苺は、このログ倉庫の架空番人です。
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