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4 繋ぐ……連想-3

14.sss 夕鈴、陛下に泣きつく




*ギャグです
*色々キャラ崩壊
*経×夕に見えるかも?しれないです
*ラストは黎×夕

それでも良い方のみお進みください。

sss 夕鈴、陛下に泣きつく

白陽国政務室前、回廊―――。
名門柳家の嫡男、柳経倬は妃がそこに通るのを待ち侘びていた。

―――もうすぐあの、出自不詳の卑しい妃がこの回廊を通るはずなのだっ!!!!

「経倬様、まだそのようなことを続けるおつもりですか?」
「もちろんだ。私はあの下賤な妃が後宮を去るまで、嫌味を言い続けてやるのだ」

胸を張り、少しだけ鼻を高くして、取り巻き達に宣言する。

「だけど、それが陛下のお耳に―――」

部下がさらに言い募ろうとした時、政務室の扉が開く。

「静かにしろ」

最初に見えたのは、薄桃色の軽やかな布地。

―――妃だ。

経倬は隠れていた物陰から、回廊の正面に出る。

「これはこれはお妃様」

大して美しくも煌びやかでもない、地味な顔を赤らめた妃がこちらの方を向いた。

「こんにちは。柳経倬殿」
「またこのようなところにいらしていたのですね。陛下の隣に立つのに相応しくない、ということにまだお気付きでないようだ」

これでお妃がショックを受け、自分から出ていけば儲けものだと、思わず経倬の顔から笑みが漏れる。経倬がこの嫌味を言い始めてから3日。
そろそろ図太い妃といえど、少しは答えてくる頃合いだろう。

妃が何か言い返す前に横を抜き去る。
ちょうど通り過ぎる時に、朝力を入れて手入れをする歯を見せつけるようにして笑うことも忘れない。

妃は立ち止り、ふるふると震えている。

―――効いている。効いているぞ。

経倬は自分の計画の完璧さに衝撃を受けていた。

―――これで明日にでも妃は後宮を去るだろう。そしてその座には我が柳家に繫がる家柄の娘が…。

まだお妃が見ているかもしれないと、経倬は高笑いを必死にこらえる。

―――完璧を目指すためには常に気を抜いてはならぬ。

経倬は必死で自分にそう言い聞かせる。
そんな時、自分の後ろから矢鋭い声が飛んできた。

「いい加減、私を好きって自覚して」

妃の声の後、回廊は周囲の音を吸い取ったように静かになる。

―――今、あの妃は何と言った?

一瞬で硬くなった体を、ゆっくりと妃の方へと振り向ける。

「好きだからって苛めるなんて、小さな子供のすることよ!いい加減私を好きだって気付きなさい」

―――何を言っているのだ。この妃は。私の嫌味が効いて、そろそろ心を患ったか?
「そんなことあるはずがないだろう」

―――そうそうこの馬鹿な妃にはしっかりと、そのあたりを理解させなければ。
「私がお前を好きだ、などと…」

―――それにしても、どうしたらそんな間抜けな考えに至ったのだか。救いようのない人間だな。どうしたらそのあたりをしっかりと…。

ふと経倬の頭に一つの考えに思い至る。

「……もしや、お前が私のことを好きなのか」

この言葉に驚いたのは妃だ。普段から間抜けな顔をさらに間抜けにして固まる。
「そんなこと言ってません」

―――そうそう、急に恋心に悟られたものはだいたいそういった反応をするものだ。妃もものの価値は解る人間だったのだな。
「照れなくともよい。よくわかった。もしお前が陛下に飽きられた時には、私がお前を下賜してやってもよいぞ」

経倬は自分の素晴らしい考えに笑いを抑えることが出来ず、とうとう回廊で高笑いしながら、歩き出した。

***

「兄上、兄上」

経倬は何者かに激しく揺さぶられ、しぶしぶと目を開いた。
目の前には、表情を硬くした、愚かな弟。

「夜中にうるさくて迷惑です。なんですかその大きな笑い声は。いい加減にして頂きたい」

よくよく見ると経倬は夜着姿で寝台の上。体の上には、柳家嫡男に相応しい、羽のたっぷり入った暖かな布団がのっている。

「今のは、夢・・・・・・?」

「なんだ!今のは」

経倬の下にその後一晩、安眠が訪れることはなく、度々寝台から発する奇声によって、二男である、方淵も寝覚めの悪い一晩を過ごすことになった。

翌朝。

いつものように妃に嫌味を言おうと、経倬は回廊にスタンバイしていたはず、だった。

けれど、昨日の夢が頭のなかを支配し、実はあの妃が自分のことを好きではないのか、と考えると耳まで熱を持つのがわかり、なかなか声を掛けることが出来ず、むしろストーカーのように顔を赤らめ、口の端をもちあげながらついて行くのが精いっぱいであった。

***

―――また、ついてきてる。

夕鈴は自分の背後にあるまとわりつくような視線で顔を青くしていた。

―――なるべくあっちは見ない。なるべくあっちは見ない。とにかく向こうは見ないのよ!!!

そう、背後にはつきまとう柳家嫡男の気配。
しかも、視線が嫌にねと付いていて、寒気がする。

―――この前まではただの嫌味だったのに、どうしたっていうのよ。

本当ははっきりと文句を言いたいところだが、気持ち悪くて、話しかけることも憚られる。
気付かれないようにそっと背後をみると全身に熱を放ちながら不気味な笑いを浮かべる経倬の姿。

―――とにかくなるべく早く、後宮へ向かいましょう!

心持ち急ぎ足で、でも、はしたなくならないように、努力しながら前へ進み、ようやく経倬が立ち入れない場所まで移動し、背後からも気配が消えたのを確認してからため息をつく。

―――新手の嫌がらせかしら。あんなのが毎日続いたら耐えられないわ。

あまりの恐ろしさにその後、夕鈴は一度も自室から出ず、侍女を傍に控えさせて過ごす。
でも、侍女に陛下の臣下が怖い。などと訴えるのも憚られ、何事もないけど、なんとなく不安な気分になったので、陛下がくるまで傍にいてほしい旨のみを伝えた。

「陛下」

陛下が来たとき、夕鈴はほっとして、思わず胸に抱きついた。
陛下は慣れた手つきで人払いをする。

「夕鈴?」

一瞬で穏やかな雰囲気になった陛下はそっと夕鈴の髪を撫でた。

「どうしたの?」

ずっと強がって夕鈴の瞳からは堪えていた涙があふれる。

「経倬様が気持ち悪いんです」

その様を思い出し夕鈴は体を震わせた。

「どうしたのゆうりん」

背中をさすりながら陛下はゆっくりと事情を聴いた。

「とにかく、怖くて」

陛下が夕鈴の涙を拭う。

―――夕鈴がこんなに僕に泣きつくなんて。経倬もたまには役に立つなあ。

と、陛下は思った



かもしれない。

おしまい☆


2014年
04月24日
13:37
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