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2 李順の休暇

【IF臨時花嫁】李順の休暇5

「ええと、御嬢さんは夕鈴さんと仰るのでしたっけ?」
「は…はい」

こんな雰囲気を纏えれば、自分もちょっと後宮で過ごしやすいのではないか、などと考えてしまい、気後れする。

「夕鈴さんは、衣装のご希望はありますか?」
「え?希望…ですか?」

「ええ、漠然と、で構いませんよ?」

そういって女性は夕鈴が何か言うのを待っている。

「あ…はい」

どんなのがいいだろう。
えっと、陛下の趣味は…お色気美人?無理無理!どうやったってお色気なんかなるわけないじゃない!

浮かんだ考えを打ち消そうとして、百面相になってしまうのを、女性は柔らかな表情で見守る。

「でも、ちょっと大人っぽくなれたら、いいなぁ…」

思わず口に出してつぶやいてしまった。

「大人っぽくですね、わかりました」

言うや否や店員は次々様々な色の衣類を肩にあてていく。
大人っぽく、という要望に答えようとしてか、普段の明るい色合いより少しくすんだ濃い色味のもの多くあててくれたが、そのどれもが夕鈴の顔色を悪く見せるばかりだった。
最初は張り切って様々な服をあてていた店員もだんだん、顔が曇っていく。

「いつもお似合いのものを選ぶのが上手なんですね」

終いにはそんなことを言われてしまった。

「あの、いいですよ。そんなに大人っぽくならなくても。私、可愛い感じも好きです」

夕鈴は少しがっかりしつつも笑顔でそう言った。

「すいません、私の力量が及ばず」
「とんでもない!こちらこそ無理なお願いをしてしまって」

結局夕鈴はせめて普段あまり着ない色を、と淡い緑の衣装を選んだ。
小物も全て緑の濃淡で選んで単色にしたのが、せめてもの大人っぽさ。

「ゆーりん、かわいいっ!!」

出てくるなり李翔は飛びつかんばかりの勢いで言う。

夕鈴は綺麗、と言われなかったことに少し寂しさを覚えた。

ーーーでも、せっかく買ってくれたものだから、喜ばないと。

「お勘定するから、ちょっと外で待ってて」
「はい!」

夕鈴は気を取り直して大きな声で返事をし、店の外にでた。

「やっぱり『綺麗』とは違うわね…」

小さな溜息がでる。

ほどなく李翔がお勘定を済ませてやってきた。

「夕鈴!おまたせ!」
「李翔さん!素敵な衣装ありがとうございます」

蕩けるような笑顔で黎翔が話し始める。

「僕がゆーりんに贈りたかったんだ。こちらこそ。受け取ってくれてありがとう」

夕鈴は小犬なのに甘い李翔のことばにどぎまぎしてしまう。

「そっ…そういえば!買い物!!忘れてましたっ!もうお昼時ですよね!どうしましょう」

どうしていいのかわからなくなってしまった夕鈴の口から出たのは、結局そんな言葉だった。

「じゃあ僕、明玉ちゃんの飯店に行ってみたい」

小犬は無邪気に笑っている。

「ええっ⁈明玉のところですか⁈ちょっと恥ずかしい」

「ダメ?ちょっと食べて見たかったんだ」

夕鈴はあとで散々明玉にからかわれる様を想像して、ちょっと嫌だと思ったが、明玉の飯店は本当に安くて美味しいから李翔さんにも食べてもらいたい!と思い切って行くことにした。

「明玉の飯店本当に本当に美味しいんですよ!」
「楽しみだな!」

2人は手を繋いで下町を仲睦まじくあるいている…ように見えるが、内心李翔は気が気でなかった。
周囲を見ると、普段より夕鈴を見る男が多いのだ。

几鍔くんには絶対会わないように気をつけようと李翔は内心硬く決意する。

そして李翔はそれにばかり気をとられていて、空の様子を見ていなかった。
夕鈴は夕鈴で明玉の飯店の美味しさと安さを李翔に伝えようと懸命になっていて。

結局2人が気づいたのは大粒の雨が降り出してからだった。

「夕鈴急ごう!」
「そうですね!」

手を繋いで走って二人が仲良く飯店に入る。

「いらっしゃいませーって夕鈴!見慣れない服ね!びしょびしょじゃない!あっ!!泥も跳ねちゃってる!ちょっとこっちいらっしゃい!」
そういうと明玉はぐいぐい夕鈴を店の奥にひっぱる。

「ええと、貴方は…最近夕鈴と話題になってる男の人?二人で走ってきたんでしょ?不思議ね、全然濡れてないし汚れてない。夕鈴は1度奥連れてくから、そこらの席ついてて」

「ああ…うん。じゃあ夕鈴、僕待ってるね!」




「りしょうさん…」

暫くして、夕鈴は酷く暗い顔つきででてきた。

「衣装よごしちゃってごめんなさい。せっかく頂いたのに…」

おずおずと李翔に、言いづらそうに申し出る。

「ぜんっぜんわからないですよね!」

「うん、夕鈴全然汚れてるようには見えないよ!」

「でも…ここ」

言われてよくよく覗き込むと、裾のところにうっすら泥はねの後があった。

「せっかく、李翔さんに頂いたのに…」

明玉が殊更大きな声でいう。
「汚しちゃったなら新しいの買ってもらうチャンスじゃない!何着だってねだればいいわよ!」

「夕鈴が欲しいならいくらでも買ってあげる!」
「ほら!旦那もそう言ってくれてるじゃない!」

「でも…」

夕鈴が更に言い募ろうとしたとき、飯店の扉が開いた。

「いらっしゃいま」「几鍔!!なんでこんなところに来たのよ!金貸しが明玉に用があるわけないでしょ!」

語気も荒く夕鈴が噛み付く。

「昼間っからうるせーなぁ。この雨だし休憩になったんだよ!んで、昼飯でもと思ってきただけだ」
「明玉に変なことしないでよ!」

几鍔は煩そうに左耳に指をいれる。

「してねーよ!ん?そういえば服がちげーな。なんだそれ?」
「あんたねぇ!人の格好みてなんだそれとか失礼だと思わないの⁈」

「素直に感想言っただけじゃねーか!」

夕鈴は握り拳を作る。

「まあまあ几鍔。綺麗だって素直にいったら〜?」

明玉がしたり顏で几鍔の顔を見た。

「はっ。こいつが綺麗なわけねーだろうが」
「えーっ。夕鈴はとっても綺麗だし可愛いよ?服で普段と雰囲気が違うから僕、どきどきしちゃう」

夕鈴は先ほどまで几鍔への怒りで握りしめていた拳をほどき、真っ赤になり、かちこちにかたまったあと、ゆっくりと椅子に座った。

几鍔はさも当然という顔で夕鈴たちと同じ座につく。

「いつもの三人前ー」
「じゃあ僕たちもそれを」

「はーい!合わせて五人前ですねー」

明玉はさっと注文を取り厨房へ向かった。

「てゆーか!なんで!あんた達この席に座るのよ!」
「ああ?座っちゃいけねーのかよ」
「まぁまぁ姉さん落ち着いてくださいよ」
「綺麗っすよ」

「だいたい李翔さんも!なんで同じの頼むんですか⁈」

ニコニコと尻尾を振った小犬は答えた。

「幼馴染の几鍔くんが頼むならきっと美味しだろうとおもって」
「それは…!確かにコイツいつもが頼むのは1番人気の品ですが!」

「やっぱりね!楽しみだなぁ!」

李翔は幻の花を背景にとばし、無邪気に言う。

まもなくして、明玉が肉まんとスープのセットを夕鈴と李翔の前にだした。

「几鍔達はもう少し待ってて。来たのは夕鈴達のが先だから」

2人が食べ始めると自然と口数は減り、やがて几鍔の元にも料理が運ばれ、5人は無言で食べ続ける。やはり几鍔達は食べるのが早く、食べ終わりはほとんど同じだった。

外を見ると通り雨だったのかもう止んでいる。

「じゃあ行こうか」

先に立ち上がったのは李翔だった。

「お勘定、几鍔くんたちの分もお願いします」

「ええっ!李翔さん。あいつらの分なんか必要ないですよ」
李翔ははっきりと几鍔をみて微笑んだ。
「僕が見れない下町の夕鈴を見せてくれたお礼に、ね」

几鍔は鋭い目で見るも李翔は鮮やかにかわし、さっさと勘定を済ませ、見せつけるように夕鈴の手を取り出口へと歩く。

「けっ!気にいらねぇ」

几鍔は小さくなってゆく二人の背中を見ながら小さく呟いた。





つづく
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  • 2014年06月27日 (金)
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