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1 本誌沿い 春・夏・秋・冬

二巡目【冬】  ひしょきらcolor

白陽国を木枯らし一番が吹きぬけたその日の夕方。
国王・珀黎翔は、木の葉もすっかり散った後宮の庭園にいた。
予定よりも随分と早く政務が終わったので後宮へと足を向けたところ、
「お妃様でしたら、庭園を散歩中でございます」と女官に教えられたからだ。

今日は、晴天とはいえ風が冷たい。
後宮に戻ったら、温かいお茶を淹れてもらって2人でゆっくり過ごそう・・・
そんな事を考えながら、黎翔は最愛の妃を探して庭園へと足を踏み入れた。


「夕鈴、こんなところにいたのか。」
ようやく見つけた夕鈴は、西の端に位置する四阿で、くつろいでいた。
「陛下!お仕事は大丈夫なのですか?」
「思いのほか早く終わってね。おかげで今日は、君とゆっくり過ごせる。」
夕鈴の隣にストンと腰を下ろし、
官吏達には決して見せる事のない甘い笑顔を向ける。
(相変わらず甘いんだから・・・)と照れながら、夕鈴もふわりと微笑んだ。

「―――それにしても、どうして此処に?
 今の時期、景観的にちょっと寂しくない?」
黎翔が訝しがるのも無理はない。
この辺りは冬場は木の葉が散った樹木が立ち並ぶだけで、
散歩に向いているようには見えなかった。

「確かに今の時期、お花も咲いていませんしね。
 でもたまには、静かな場所で色々と思いを巡らせるのも楽しいですよ。」
そう答えながら、夕鈴は、ふふ・・・と笑った。
「へぇ・・・どんな事を考えていたの?」
「うまく言葉にできないけど・・・これまでの色々な事を思い出していました。
 ―――それから、今の私はなんて幸せなんだろう、って。
 去年の今頃は、貴方の側に戻ってこれるなんて、思いもしなかったから・・・」


一瞬、穏やかな笑顔の影に「あの時」の悲しみが垣間見えた気がして、
黎翔は心臓をえぐられるかのような痛みを覚えた。
1年前の「あの時」。
これ以上、夕鈴を危険な目に遭わせたくない。
その一心で、断腸の思いで手放した・・・つもりだった。
しかし、その決断が逆に彼女を傷つけていたのかもしれない―――

居た堪れない気持ちになった黎翔は夕鈴を引き寄せ、ぎゅ、と強く抱きしめた。
「・・・・・・陛下?」
「あの時は君を傷付け、辛い思いをさせてしまったね・・・本当にごめんね。
 君にはいつも笑っていて欲しい、と思っていた筈なのに・・・」
「・・・・・・・・・」


しばしの静寂が2人を包んだ後。
「―――陛下、それは違いますよ」
堅く結ばれた紐を解くように、夕鈴がそっと黎翔の腕の中から顔をあげる。
「貴方は私を安全な場所へ匿ってくれた。そして頃合をみて迎えに来てくれた。
 その間に私は、臆病だった自分と向き合うことが出来た。
  ・・・ただ、それだけの事でしょう?」
そう告げる夕鈴の表情には悲しみなど欠片もなく、幸福感が溢れていた。

「夕鈴・・・まったく、君は―――」
ぎゅ、ともう一度強く夕鈴を抱きしめて。
「ありがとう 愛してるよ」
ただ一人だけに届くよう、黎翔は、妃の耳元でそっと囁いた。


「寒くなってきたね。戻ろうか、後宮に。」
「そうですね・・・そうだ、帰ったらお茶にしましょう?
 少し前に女官さんに教えてもらって作った柚子茶が、
 そろそろ飲み頃の筈ですから。」
「君の手作りか。それは楽しみだな」

―――寒い季節も、君と2人なら暖かい。
黎翔は穏やかな笑顔で夕鈴の手をとり、スルリと自分の指を絡める。
互いの手の温もりを感じながら、2人はゆっくりと帰路についた。
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  • 2014年09月11日 (木)
  • 14時07分48秒
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