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1. 電球陛下

番外編(?)です

ある王国の光る王様の物語。
~王宮電飾編~




ここ、白陽国では、今日も政務室から怒声と共に眩しい光が漏れていた。

「報告書を上げるのに、一体何時まで掛かっている!
さっさと仕上げて持って来いっ!!」

カッと眩く光りながら、陛下の叱責は続く。
官吏達は、グラサンの奥の眼を瞑りながら、低頭している。
本日も、陛下の光彩は、容赦なく辺りを照らしていた。
だが、その消費電力は、大幅に下がっていた。

先日、王宮お抱えの職人が、陛下の側近に命じられ、大幅な改良を施したのだ。
側近曰く、あまりにも消耗が激しいので、もう少し長持ちさせられないか―――と。
そうして、職人は頭を悩ませつつ、懸命に試行錯誤を繰り返し、新しい電Qを完成させた。
明るさはそのまま、だが、寿命は長く、消費力もぐっと抑えた。
しかも、今度は割れにくいという、かなり優れものだ。
通称、得良出(エルイーディ)。
この改良された電Qを使用するようになってから、格段に経費が削減できた。
最初に掛かった開発費も、直ぐに元が取れるだろう。
側近は内心ホクホクだ。
陛下も、今までより交換期間が長く、電力消費が低い為か、絶好調だ。

そんな中、陛下の電力…もとい、やる気を更に上げてくれる存在が、現れた。
「失礼致します」
柔らかな声で、静々と執務室に入ってきたのは、陛下唯一の花。
淡い桃色の衣装で、優雅に裾を捌きながら(側近姑特訓成果)、団扇で顔を隠し(万が一の発光避け)陛下の傍まで近づく。
「ああ、待ちかねたぞ、我が妃よ」
途端に、陛下のワット数が下がり、光が柔らかくなる。
どうやら、色味も切り替えられるようだ。(昼光色、昼白色、電球色)
「お仕事のお邪魔ではありませんか?」
慎ましい妃の言葉にも、陛下はほわほわ光りながら、引き寄せる。
「君が傍に居てくれた方が、捗ると言うものだ」
「さ、然様でございますか。
でも、皆様のお邪魔をしてはいけませんので、私はあちらに座って見守らせて頂きます」
夕鈴は、そそくさと何時もの席に向かおうとするが、何故か陛下が付いてくる。
椅子まで手を取り、優雅にエスコートしつつ、仲良し夫婦を見せつけようということか。
「もう少しで、区切りが着く。そうしたら、別室で休憩にしよう」
「はい、陛下」
夕鈴は、にっこり妃笑顔で答える。陛下の後ろから見える、側近の鋭い眼差しに耐えながら。

机に戻った陛下は、早速昼光色で、仕事を再開する。
書簡を広げ、担当者を呼び、あれこれと確認を取りながら、指示を出す。
ワット数は、実質40でも、効果は60wという明るさだ。
今日も、官吏達はサングラスを外せない。



仕事が一段落したのか、陛下が夕鈴を誘う。
「さて、妃と暫し休憩を取る。私が戻るまで、書簡と共に、資料を揃えておけ」
そう言いおくと、陛下は夕鈴を抱き上げた。
「陛下っ。歩けますから、降ろして下さい~」
ワット数は低く、改良された為か、前よりは熱くないが、それでも至近距離は眩しい。
袖で顔を覆いながら、夕鈴はジタバタともがくが、陛下はさっさと休憩室へ向けて歩き出した。


結局、庭の見える休憩室まで運ばれてしまった。
勿論膝抱っこである。
「陛下、お茶を入れられませんので、話して下さい」
何とか拘束から逃れようと、夕鈴はお茶をダシに離れようとする。
だが、陛下はますます拘束を強めた。
「茶なら、女官に入れさせれば良い」
「わっ私が入れます!入れさせて下さいっ!!」
「私の妃は、そんなに私から離れたいのか?」
「い、いえ!そうではなく…陛下に入れるお茶は、私が入れたいと…」
仲良し夫婦アピールも兼ねて、夕鈴は必死に言い募る。
それが功を奏したか、陛下の腕が緩んだ。
「君が私の為にと言うなら、仕方ない」
出力20wの柔らかい電球色で、機嫌よく引き下がった。

漸く近くの眩しさから解放された夕鈴は、お茶を入れるべく、道具に手を伸ばす。
だが、まだ少し、目がチカチカしているようで、何度か瞬きを繰り返した。
陛下の傍に居る時は、常時サングラスをしていなくては、ならないかもしれない。
常時グラサンの妃ってどうなのだろう?
そんなことを考えながら、慎重にお茶を入れてゆく。
ふわりと薫るお茶が、夕鈴の気持ちを鎮めてくれた。

ゆったりとした時間が流れる。
冬囲いの済んだ庭は、何処か凛とした風情を湛え、針葉樹の木々が、眼を和ませてくれる。
暖かい室内から、景色を楽しみながら、お茶を楽しむ国王夫妻(仮)。
側に控える侍女達も、にこやかに見守っている。

「そうだ、妃よ。今夜は街で花火が上がる。丁度、中庭の四阿から見れるはずだ」
「花火ですか?!素敵ですね。では、暖かくして準備しておかないと」
夕鈴が楽しげに笑う。
火鉢と、風よけの屏風、勿論防寒具もだ。
あれこれと必要なものを思い浮かべる。
「今日は早めに帰る。夕餉を一緒に摂ろう」
「はい、陛下。お待ちしております」

うまく話が付いたところで、側近が迎えに来た。
「失礼致します、陛下。そろそろ執務室へ、お戻り下さい」
「わかった。では、妃よ。君と離れるのは辛いが、今夜の為にも、さっさと仕事を終わらせてくるとしよう」
「はい。頑張って下さいませ。私は、夜の為に、準備をしておきますね」
にこやかに妃笑顔を浮かべて、夕鈴は陛下を見送った。


側近を連れて執務室に戻った陛下は、休憩前より更にパワーアップして書類を裁き始めた。
出力は100wと抑え気味だが、時々昼白色で光彩を放ち、官吏を叱責しながら進めていく。
その速さに、官吏達も必死だ。
サングラスをかけた者達が右往左往する。
なかなかシュールな光景だが、これが当たり前になると、誰も異様に思わない。
慣れというのは、感覚を麻痺させるものだ。


日も暮れ、官吏達も疲労困憊になった頃、その日の政務が終了した。
意気揚々後宮へ帰る陛下の後には、漸くサングラスを外し、ぐったりとした官吏達の疲れた姿があった。





約束通り、陛下は夕餉を妃の部屋で摂った。
今夜の花火の話で盛り上がる。
「色々上がるらしいよ。色も豊富だし、職人達が技を競い合うから、形も様々だって」
人払いをしたので、陛下も小犬の口調で、ほわほわ光りながら、愉しげだ。
「そうなんですか。楽しみです!四阿の方も、色々持ち込んで、ご用意しておきました」
老師に相談し、女官にあれこれ運んで貰い、準備は万端だ。
あとは、花火が上がるのを待つだけ。
ウキウキとした国王夫妻(仮)は、楽しい夕餉を過ごした。



日もすっかり落ち、すっぽりと闇が全てを包んだ頃、陛下と夕鈴は、連れ立って四阿へと行った。
陛下が60wの昼白色で明るいので、松明や手燭は、一切不要だ。
こういう時は、便利よね。
と、夕鈴が思ったかどうかは、分からない。

準備の整った四阿は、風よけの布が掛かり、屏風が立掛けられ、いくつも火鉢が置かれて暖かかった。
椅子には毛皮が敷かれ、ひざ掛けもある。
宅の上には、酒とお茶、軽い軽食が用意されていた。
「準備は万端です!」
夕鈴は握りこぶしで宣言する。
「うん。凄いね」
嬉しげに陛下がほわほわと輝く。
「花火は、何時からでしょうか?」
「もう少しで始まると思うよ。座って待とうか」
フカフカの毛皮の上に、並んで腰を下ろす。
「あの…陛下……」
「ん?何、夕鈴?」
ご機嫌な陛下は、柔らかい電球色に切り替え、チカチカと瞬いている。
「もうすぐ花火が上がるんですよね」
「うん、そうだよ。ここからだと、正面に上がるから、よく見えるよ」
当たりに灯りはない。
人払いをしている為、見える範囲に人影はない。
陛下の鼓動に合わせるように、トキメキを表すように眩しく輝く電Q。
甘い雰囲気、ではなく、眩しさに夕鈴は目を閉じた。

そんな中、突然無粋な客が現れた。
いかにも、といった黒尽くめの影が四阿を取り囲む。

「何故、この場所がっ?!」
「それだけ光っていれば誰でもわかるっ!」
「∑(゚Д゚)」

陛下のワット数は抑えられているとは言え、辺りに灯りはなく、夜であれば、特に分かり易い。
火の灯りではなく、眩しい程の白い灯りを探せば、そこに王が居るのだ。
見つけ易いといえば、その通りだろう。

「あ~あ。なんで邪魔するかなぁ」
声と共に、ヒュっと空気を裂く音が鳴る。
陛下の隠密が、嬉々として腕を振るい始めた。
勿論、陛下自身も、剣を抜いて身構えている。

早く片付けないと、花火が始まってしまう。
せっかくお嫁さんとの楽しい時間を潰されてなるものか!

いい雰囲気(と陛下は思っていた)所への、横槍である。
ムッとした陛下は、さっさと片付けよう、と昼白色に切り替え、ワット数を上げた。
「夕鈴」
一言、側に居る妃に声を掛ける。
名を呼ばれ、夕鈴は直様サングラスをかけ、袖で顔を覆う。
その間、一秒未満。実に手馴れたものである。

次の瞬間―――四阿周辺は、眩い光に包まれた。

陛下の電力最大出力(1000w)、360度攻撃だ。
一瞬で視力を奪われた刺客たちは、次々と浩大が捕縛し、駆けつけた警備兵に引っ立てられていった。

「李順を呼んで、背後関係を調べさせよ」
陛下は端的に命を下す。
明かりは昼白色のまま、ワット数は100まで落としたが、鋭い光で指示を出す。
そんな所へ、ドンっと大きな音が響いた。

花火が始まったのだ。
「あ…」
夕鈴がサングラスをずらし、空を見上げる。
色鮮やかな大輪の花が、夜空に咲き始めた。
だが、こんな騒ぎが起こってしまっては、呑気に花火見物などして良いものか。
夕鈴は戸惑いながら、陛下の方へ視線を戻す。
明かりはまだ、100より落ちていない。

「警備を厳重にせよ!ねずみ一匹入れるな!!」
陛下が激を飛ばし、警備兵が散らばる。
「あの、陛下。今日はもう、お部屋に戻ったほうが…」
花火は残念だが、陛下に何かあっては大変だ。
そう思ったから、夕鈴は眩しさに耐えつつ、サングラスを抑えながら言った。
「妃よ、せっかくこのように準備をして、花火も始まっているというのに、引き返すと言うか?」
「ですが……また刺客が来たら……花火より、陛下の方が大事です」
「本当に、私思いの妃だな。だが、心配は要るまい。警備も増やしたことだ。
せっかく用意した席が、無駄になってしまうのは、残念だろう?」
「うっ………でも…」
「ほら、花火が上がってるよ」
夕鈴に近づいた陛下は、明かりを落とし、小声で囁く。
ドン、ドン、と躰に響く音と共に、次々と花が咲く。
「さあ、妃よ。共に楽しむとしようか」
いつの間にか、陛下の膝上に抱かれ、もふもふのマントに包まれている。
いつもながらの早業だ。
こうなっては、もう何を言っても陛下は動かない。
仕方なく、夕鈴は大人しく、そのまま花火を見ることにした。
周りに侍女や侍官、警備兵が居るので、暴れるわけにはいかなかった。
陛下は、5wの豆電状態なので、眩しくも熱くもない。
至近距離でも大丈夫だ。
夕鈴は、掛けていたサングラスを胸元に仕舞う。またいつ使うか分からないからだ。

国王夫妻(仮)は、他のギャラリーと共に、花火を楽しむことにした。


花火も最後の連打に入った頃、ふと夕鈴が呟いた。
「あの花火の光を、留めておけたらいいのに…」
「…夕鈴?」
「あ、いえ。何でもありません…」
自分の何気ない呟きを聞かれたかと、夕鈴は袖で口元を覆う。
「どうしてそう思ったの?」
陛下は耳元で聞く。本当に、どうやって声を出しているのか。
でも、それも突っ込んではいけない。
夕鈴が言い淀んでいると、更に促される。
「えっと、あれだけの光があれば、陛下が何処にいらっしゃるか、すぐには分からなくなるんじゃないかと……」
日が落ちた後は、あちこちで篝火や灯篭が点けられるが、電気の明かりは特殊だ。
だが、花火のように、あれだけ眩い光があれば、目暗ましくらいにはなるのではないだろうか。
夕鈴はそう思ったのだ。
だから、つい思ったことを言ってしまった。
まさか、自分の思いつきが、後日どんな結果になるのかなど、この時の夕鈴に分かるはずもない。

夕鈴の言葉に、陛下のワット数が上がった。
といっても、せいぜい10wだ。あまり上げては、熱さに夕鈴が離れてしまう。
「我が妃は、本当に優しいな。私の身を気遣ってくれるとは」
陛下が上機嫌で、ホワホワと光る。
そして、夕鈴の提案に(提案したわけじゃない)思考を巡らせた。


後日、王宮お抱えの電球職人に、新たな仕事が言いつけられた。
陛下同様の得良出(エルイーディ)の小さい型を、大量に製作せよ、と。


ひと月後、王宮では、毎夜イルミネーションが灯され、その明かりは街からも見える程で、白陽国の新たな名物となった。
そんな中、陛下の側近は嵩む電気代に頭を抱え、どう経費削減をするべきか、悩むのだった。


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