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2. 電Q☆現代パラレル  

電Q現パロ4 ~電球の呪い編~

ふわふわ…なんだか気持ち良い……。
夢心地の中で、夕鈴は寝がえりを打つ。
身体を受け止める布団は、柔らかく包み込んでくれる。
「ん……」
もう一度、深い眠りに入ろうとした意識に、待ったを掛ける声が聞こえた。
「夕鈴?気が付いた?」

気が付く?何が?
夕鈴の頭の中で、疑問符が浮かぶ。
ゆっくりと、浮上する意識と共に、瞼が持ち上がる。
視界に入ってきたのは、いつもの自分の部屋ではなく、クリーム色の天井と、シンプルな照明器具。
そして、ほんのり明るい電球の灯り。

「―――――っ!!!!!!!」

一瞬で意識が覚醒した途端、夕鈴はがばっと起き上った。

「っと、そんな急に起き上って、大丈夫?!」
電球が声を掛けてくる。
「ひっ!……だ…大丈夫…です」
思わず身体が引けたのは、仕方ないだろう。
何せ、相手は普通の人間じゃない。
少しくらっとした頭を押さえながら、夕鈴は自分に言い聞かせる。
落ち着け、落ち着け。
えーと、ここは、黎翔さんのおうちで、私は惣菜を届けに来て、お茶をご馳走になって、帰ろうとしたところで……。

そーっと視線を右上に上げる。
20Wくらいの電球が、ほわほわと光っていた。
その下には、人の身体が続いている。

夢だったと思いたかったが、現実は彼女に厳しかった。


「……れ…れい…しょう……さん?」
「うん。本当に大丈夫?お水でも飲む?」
恐々と声を掛けると、あっさり返事が返り、枕元のサイドテーブルに乗っていたグラスを渡される。
夕鈴は恐る恐る手を伸ばし、コップを受け取ると、口に運んだ。
冷たい水が喉を通り、思ったより自分が乾いていた事を知る。
飲み干すと、コップを戻し、改めて現状を確認しようとした。

「あの……ここは…?」
セミダブルのベットが二つ並ぶ、15畳程の部屋。
備え付けのワードローブに、各々のサイドテーブル、スタンド型の照明器具が、淡い光を放っている。
部屋が広い割に、至って簡素な部屋だった。
「客用の寝室だよ。夕鈴、気を失っちゃったから、ここに運んだんだ」
ほわほわ電球が―――もとい、黎翔が説明をする。
「そっそれは!お手数をお掛けしました。済みません!」
夕鈴がわたわたと布団から抜け出す。

「ううん。突然で、驚かせたのは、こちらだからね。説明しようにも、話がかなり長くなるから、また日を改めてと思ったんだけど…」
時間切れになっちゃって、夕鈴を驚かせてしまった、と黎翔は謝る。
そういえば、帰る前に、また今度話があるとかなんとか言われたな、と夕鈴は記憶を遡る。
立ちあがったものの、そのままベッドの上に、ぽす、と座らされた。
「お話の内容は…そのあ…姿に関すること、ですか」
頭、と言いそうになったのを、なんとか誤魔化す。さすがにその良い方は、ストレート過ぎだろう。
「うん、そう」
「何故、私に?」
夕鈴としては、素朴な疑問として聞いただけだった。
だが、それに対する答えは、重みを持った、真剣な声だった。
「君が鍵だから」
「へ?」
「この呪いを解く為には、どうしても、君の存在が欠かせないんだ」
黎翔の真剣な口調に―――何処から発声されているのかは良く分からないが―――夕鈴は聞く体制を取る。
「呪いって…何ですか?私が鍵?どういう事なんですか?!」
夕鈴の顔には、訳が分からない、と書いてあるかのように、困惑が広がっている。
「うん。全部話すと長くなるから、詳しい事は後日として―――割愛すると、僕には先祖代々の呪いが掛っていてね。
見ての通り、日が暮れると頭部が電球になってしまうんだ。その呪いを解く鍵が、夕鈴、君なんだよ」
「へ?えええええぇぇぇぇぇえええ?!」
3度目の雄叫びだった。


その後、どういう事かと詰め寄ったものの、話はまた後日、ということで切り上げられ、結局詳しい事は分からずじまいだった。

「さ、今度こそ、送るよ」
そう言われて、夕鈴は立ちあがるも、ふとその顔―――でいいのか―――を見上げた。
送ると言っても、この姿で外に出て、誰かに目撃されたらどうなるのか。
そんな夕鈴の考えを察したのか、黎翔はほわほわと光りながら説明した。
「君を送るのは、僕じゃないよ。残念だけどね」
「え?いや、大丈夫です。一人で帰れますから」
「駄目だよ。もう外も暗くなってる。女の子が一人で夜道を歩いていて、何かあったらどうするの?」
大丈夫、駄目だ、の応酬をしながら、最初のリビングへと移動する。


広々としたリビングは、シャンデリアが煌々と光っていた。
その下には、ソファで寛ぐ小柄な男性の姿。
「あ~やっと出てきた。何時まで籠ってるのかと思っちゃったよ」
にかっと笑う顔は、人懐っこい雰囲気だ。
「浩大。煩い」
睨んだのかどうかは分からないが、電球の光が、白っぽく、鋭くなった。
「お~怖っ」
そんな変化にも、肩をすくめておどける浩大と呼ばれた童顔の青年は、ちろっと夕鈴に視線を向けた。
「初めまして~。鍵のお嬢さん。俺っちは、この光ってる人の小間使いでね。浩大って言うんだ。大ちゃんって呼んでね」
「…はぁ。あの、汀 夕鈴です。宜しくお願いします」
夕鈴が戸惑いながらも、丁寧にお辞儀をすると、浩大はまた、にかっと笑った。
「浩大、準備は出来てるのか?」
鋭い光を投げかけられても、浩大の態度は変わらない。
「もっちろん!何時でも出れますよ~。んじゃ、行きますか」
「夕鈴。彼が車で送るから、地下の駐車場へ一緒に行ってね。僕は一緒に行けないけど…」
「へ?え、あ、はい。あ…ありがとうございます」
戸惑いながらも、夕鈴は頷いた。

「じゃ、またね。夕鈴」
玄関で、黎翔が念を押すように、声を掛ける。
「はい…。あの、お邪魔しました」
丁寧にお辞儀をして、夕鈴は玄関を潜った。


エレベーターで、一気に地下まで下りる。
指先で鍵を回しながら、鼻歌を歌う浩大に、夕鈴はそっと声を掛けた。
「あの…浩大さん」
「ん?何?道なら知ってるから、大丈夫だよん」
「いえ、そうじゃなくて…」
夕鈴の聞きたいのは、黎翔の事。なぜ、あんな姿になるのか。自分が鍵とはどういう事か。
何が何だかわからなくて、まだ頭がぐるぐるしている。
「ん~それについては、俺からは、あんまり話せる事はないなぁ。また改めて、ちゃんと説明するって言ってなかった?」
「はい。そう言われましたけど…」
「うん。じゃあ、それまで待ってればいいんじゃね?どーせ考えたって分からないだろ?」
浩大のあっさりとした物言いに、夕鈴は頷かざるを得ない。
とりあえず、何も分からない事を考えても、時間の無駄だ。
一旦置いておく事にしよう。
気持ちを切り替え、夕鈴は案内された車に乗り込んだ。


「あの…浩大さんは…黎翔さんとの付き合いは、長いんですか?」
呪いだとかの内容を教えて貰えないのなら、他の事を聞いておこう、と夕鈴はまず、浩大から突いてみる事にした。
「ん~そうだねぇ。俺んちが、代々珀家に仕えていてね。小さい頃は、遊び相手だったし」
今はすかしてるけど、小さい頃は可愛かった、と浩大は語る。
「甘えたでね~」
「へぇ…そうだったんですか」
ほのぼのとした情景が浮かんだが、何故か、頭が電球に切り替わってしまい、夕鈴は一人焦る。
「あ…あの、ご両親はどんな方なんでしょうか……」
やっぱり電球なのだろうか。
微笑ましい筈の親子の情景が、なんだかシュールなものになってしまった。
ぶはっと浩大が吹き出した。夕鈴の考えている事が分かったのだろう。
「い…いや……。奥様…あの人のお母さんは、普通の人だったよ。アレは、父親の方の系統だから」
「そっそうですか!」
夕鈴は赤面しながら、わたわたと慌てふためく。
本当に、嘘や誤魔化しが出来ない性分だ。
「ちなみに、あの人が小さい頃は、豆電だった」
「ええっ?!豆電?ほんと?!」
「と言うのはうっそ~ん」
「浩大さん!!」
けらけらと笑う浩大に、文句を言うも、馬耳東風だ。
一瞬、頭の中で豆電球な小さい黎翔を思い浮かべてしまったのは、絶対口にはできない。
そんな会話を交わしていたら、あっという間に、自宅前に着いてしまった。



そんな衝撃の出来事から5日後。
夕鈴はいつものコンビニバイトで、黎翔に会った。
「こ…こんにちは」
昼間なのだから、勿論黎翔の顔は普通の人のものなのが、何故か内心焦ってしまった。
変わらず綺麗な顔立ちだな…ってそれはどうでもいいのよ!と自分で脳内突っ込みをしつつ、夕鈴は知らずに身構える。
「うん。この間は、ありがとう。料理、どれも美味しかったよ」
「あ、そっち……。そうですか…それは、良かったです」
何となく、眼を合わせづらくて、夕鈴はつい俯いてしまう。
「それでね。この間言ってた、説明のことなんだけどね」
気になっていた事を言われて、はっと顔を上げた。
途端に、「のわあっ」との奇声と共に、仰け反る羽目になった。
なんなんだ!どうしてそんな近くに顔を寄せているんだ!!
思わず口から文句が出そうになった。
黎翔は、カウンター越しに、夕鈴の顔を覗きこむかのように、接近していた。
「近い近い近いです~!」
「だって、夕鈴、顔見せてくれないから」
20歳過ぎた大の男が拗ねる姿というのも、ある意味怖いものがある。
それをつい、可愛いなどと思ってしまった時点で、夕鈴の立場は劣勢と言えるか。
「夕鈴の都合のいい日を聞こうと思ってね」
押されても、どこ吹く風と、黎翔は笑顔で詰め寄ってくる。
「今度は何時、来てくれるのかな?って」
「は?」
「約束したでしょ?またご飯作ってくれるって」
「はぁ…」
確かに。だが、そっちか?!と思わずにはいられない。
それよりも、説明が先でしょーがっ!との思いを込めて、夕鈴は眼の前の整った顔をぎんっと睨みつけた。
「話はその時にしようと思ってね」
にこにこと話す黎翔は、傍から見ても、凄くご機嫌だ。
夕鈴の睨みなど、気にもしていない。
はぁ、と溜息が洩れる。
「…明日の午後からなら、時間はありますけど……」
呟くように言うと、黎翔のご機嫌モードが、更にアップした。
今は昼間なのに、電球で明るくなったように感じたのは、気のせいか。
眼の前で、しっぽを振って喜んでいる小犬のような成人男性を見ながら、夕鈴は自分の感覚が不安になってきた。
既に感覚が毒されているのかもしれない。
「じゃあ、明日、1時頃に迎えに行くね」
うきうきモード全開の黎翔に押し切られ、疲れ切った夕鈴は、力なく頷いた。




コンビニでの約束から、夕鈴の溜息が100回を越えた頃、汀家の前に約束のお迎えが着た。

「すみません。わざわざ来て下さって」
「全然。買い出しもあるんだよね?荷物あるなら、足があった方がいいでしょ?」
今日も黎翔はご機嫌だ。
助手席に夕鈴を乗せ、ゆっくりと住宅街を進む。
前回、浩大に送迎を任せる羽目になったのが悔しかったというのは、勿論秘密である。


マンションに行く前に、夕鈴行き付けのスーパーに立ち寄る。
午後一からのお買い得品など、事前にチラシでチェック済みだ。
「何か食べたい物とかありますか?」
「夕鈴が作ってくれるなら、何でも良いよ」
「そう言うのはいいですから!」
夕鈴は真っ赤になって、ずんずんと進んでいく。
テキパキと品を決めて行く夕鈴の後を、買物かごを持った黎翔が、にこにことしながら付いてゆく。
「…随分ご機嫌なようですが…何か良い事あったんですか?」
すっかり顔が緩んでいる黎翔を見上げて、夕鈴はつい、聞いてしまった。
「ん~?何だか新婚さんみたいだな~って思って」
「んなぁっ?!何言ってるんですか?!」
瞬間湯沸し器も負けるだろう、一瞬で夕鈴が沸点を超えた。
「だってさー。休日の昼間に、若い男女が連れ立ってスーパーで買い物、なんて新婚夫婦とかかなぁ、って周りから推測されてるみたいだし」
夕鈴は品定めに真剣だったので気付かなかったが、確かに周りの主婦達からは、「あら、若いカップルね~。新婚さんかしら」「旦那さん、イイ男ねぇ」などと微笑ましげに見られていたのだ。
「―――――/////っ!」
周りの視線に気づいた途端、夕鈴が羞恥のあまり、真っ赤になって爆発した。


恥ずかしさが頂点を超えた為、夕鈴は買物を終えてから、車の中でも始終無言だった。
真っ赤になって俯いたまま、ぼふぼふしている夕鈴を見て、流石に黎翔も気遣う。
「夕鈴?怒ってる?」
「へ?は?何がですか?」
「さっきの、お店でのこと…。新婚さんみたいだとか言ったの…不愉快だった?」
ちらっと視線で伺ってくる顔は、既に萎れた小犬モード。
ぺしゃっと垂れた耳が見える。
「やっ!あの、それは…恥ずかしかっただけで…!」
「僕と夫婦って、恥ずかしい?」
「そうじゃなくてですね!」
「嫌じゃない?」
「ぜんっぜん!嫌じゃないです!!寧ろ、相手が私でごめんなさいって言うかっ!」
「なんで?僕は夕鈴が相手だったら、嬉しいけど」
「いや、だから、そういうことじゃなくて~」
言ってるうちに、訳が分からなくなってきた。
パニくりだした夕鈴を見て、黎翔が吹き出す。
「かっ、からかわないで下さい!!」
真っ赤になって、涙目で睨んでも、ちっとも怖くない。むしろ、その顔は別の意味で危険だ。狼の前で、そんな顔をしてはいけない。
「からかってなんていないよ」
宥める様に、ぽんぽん、と頭を撫でられ、夕鈴はまた俯いた。
「僕は夕鈴のこと好きだから、そういう風に見られたら、嬉しいなあって思ったんだよ」
念押しのように言われ、また夕鈴の顔が赤くなる。
「そ…それは……ありがとうございます……」
ぼそぼそと呟くように言いながら、夕鈴は、ますます縮こまってしまった。




ドライブはあっという間で、黎翔のマンションに付くと、地下からエレベーターで一気に最上階まで昇る。
ちなみに、荷物はさっさと黎翔が取り上げた。
夕鈴の手には、おやつにと買ったケーキの入った箱だけだ。



相変わらず、だだっ広い豪華な部屋の中。
キッチンで荷物を片付け、一段落した所で、黎翔がいそいそとお茶の準備を始めた。
「さて。今回は旨く入れられるかな」
「え?あ、私がやりますよ?!」
「いいから、夕鈴は座ってて。あれから何度か自分で入れて、練習したんだ」
褒めて、と言うかのように、しっぽを振る小犬…もとい、にこやかな黎翔。
夕鈴が教えた通りに、たっぷりと湯を沸かし、ポットとカップを温める。
手持無沙汰な夕鈴は、テーブルに置いていたケーキの箱に手を伸ばした。
「ケーキ、出しますね」
「あ、そうだね。食器は好きなの使って」
「はい。って、そうだ。この間の割ってしまったカップ…」
「ああ、弁償するって言ってたけど、良いって言ったよね?基本一人だし、こんなに必要ないんだから、一つくらい無くても困らないよ」
「でもっ!」
「あ。それより、夕鈴専用のカップを用意しようか」
「は?」
「僕とお揃いのカップ。どんなのがいい?今度一緒に見に行こうか」
バックに花を背負った小犬が、ドリームを語りだした。
夕鈴は付いて行けずに、沈黙するしかない。
沈黙は肯定。黎翔の中で、次は夕鈴とペアカップを買いに行く事が決定した。


リビングに移動し、テーブルにお茶のセットとケーキを移すと、黎翔が夕鈴の前にカップを置いた。
「どうぞ、先生。お味の程はどうでしょうか?」
少しおどけて見せる表情に、夕鈴も笑みが浮かぶ。
「では、頂きます」
そっとカップを持ちあげ、ふう、と息を吹きかける。
ふわりと紅茶の香りが広がった。一口含み、ゆっくりと味わう。
「ん。美味しいです」
眼を細め、嬉しそうに微笑む夕鈴。
じいっと見ていた黎翔も、ほっとしたように微笑んだ。
「良かった」
「ふふ。ほんとに美味しいですよ?」
「夕鈴流、免許皆伝?」
「そうですね。お免状、差し上げてもいいですよ」
リビングに、2人の笑い声が響いた。

お茶とケーキで一息ついた所で、黎翔が漸く本題に入った。
「さて。じゃあ、この間の『呪い』についての説明をしようか」
和やかだった空気が、少し緊張したように感じるのは、夕鈴自身が緊張したからだろうか。

「何代か前の当主の書きつけで、分かった事なんだけどね」
そう言って、黎翔は事の始まりから説明を始めた。


珀家は、昔から続く旧家であり、遡れば王家に辿り着くような家柄であり、今現在も、上流階級ではトップクラスだ。
そんな長い歴史を持つ家なので、中には問題児と言えるやっかいなのも出てくる。
今から数代前の当主が、このやっかいな部類に入る人だった。
本家お膝元にある、これまた古い神社の巫覡(シャーマン)と、何やらいざこざを起こしたのだ。
その神社というのが汀家であり、当時の巫覡であった女性から、呪いを受けてしまったそうだ。
「って、うちの先祖が呪いを掛けたんですか?!」
「そうらしい。調べてみるとね、呪いを掛けた当時のその巫覡は、結構な力を持っていたらしいんだよね」
「…はぁ」
なんだか、いきなり怪しい方向に話が進んでいく。
って、呪いってところでもう既に怪しいけれど。第一、うちが神社の家系だなんて知らなかった。
夕鈴の戸惑いを余所に、黎翔の話は続く。
「呪いの解除方法については、色々条件があってね。その後、何代もの当主があれこれ試したんだけど、どうやら、汀家直系の女性によってしか、解けないらしいんだ」
「それで、私が鍵だと仰ったんですね」
「うん。呪いを解くには、清らかな未婚の乙女の許しが必要だって、書付には書いてあるんだ。それと、もう一つ。リモコンみたいなのがあるらしいんだけど…夕鈴の家でそんな話とか、聞いたこと無い?」
「へ?リモコン…ですか?」
「うん。リモコンというか、オン、オフのスイッチくらいの単純なものだと思うんだけど」
黎翔からそう言われて、夕鈴は記憶を辿る。
リモコン…スイッチのようなもの…何かあったかしら?
「あ…もしかして……」
「心当たりある?!」
ぽつりと呟いた途端、黎翔が食いつくように身を乗り出してきた。
自分の呪いが解けるかどうかが掛っているのだから、当然と言えば当然なのだが、いきなり目の前に迫ってこられては、驚いて引いてしまう。
「あの…昔、お祖母ちゃんから、大事なものだから、失くさない様にって渡された箱があるんですけど…中身が何なのか、見ていないから、それがそのリモコンなのかどうか…」
「今、その箱は、君の家にあるの?」
「あると思います。多分、納戸の中とかに、仕舞ってあるかと…」
「直ぐに見て貰っても良い?それで、もしその箱の中身がそれだったら、今日中に試したいんだけど…良いかな?」
「はい、勿論です!」
黎翔も、呪いが解けるかもしれない、ということで些か気が逸っているようだ。
直ぐ様車の鍵を掴むと、夕鈴を促した。
「慌ただしくて、ごめんね」
「いえ!こうなったら、さっさと呪いを解いて、すっきりしましょう!」
「うん。ありがとう」
ほにゃっと小犬になった黎翔が笑う。


二人は再び車で汀家へ向かう。
「そういえば、どんないざこざで、うちの祖先は呪いなんて掛けたんでしょうか?」
車の中で、夕鈴はふと疑問を口にした。
「……その辺は、詳しく書かれていなかったんだよね。ただ、なにやら揉め事があったらしいとしか、分からなくて…」
心なしか、黎翔の歯切れが悪くなったが、疑問に気を取られていた夕鈴は、気づかなかった。
「そうですか…。うちの御先祖が、こんな呪いを掛けたせいで…御免なさい」
「いや!夕鈴が悪いせいじゃないからね?!そんな謝ることないから!」
まさか、その揉め事と言うのが、当時問題児だった当主が、巫覡に対して不埒な行為に及ぼうとして、手痛い返り討ちに遭った、などというのが知られたら、どんな反応が返されるか、夕鈴には到底真実は言えなかった。



「ちょっと待ってて下さいね。直ぐに見てきますから」
「大丈夫?手伝うよ?」
「平気ですよ。そんなに物が多いわけじゃないですから。直ぐに見つかると思います。
黎翔さんは、ゆっくりお茶でも飲んでて下さい」
汀家に付いて、夕鈴は居間に黎翔を案内すると、自分は納戸へと向かう。

ガタガタと、些か建付けの悪い引き戸を開ける。
普段使わないものなどを入れてあるので、埃と澱んだ空気が舞った。
「ここも一度整理した方が良いわね」
そう呟きながら、夕鈴は古い記憶を思い出そうとゆっくり視線を巡らせる。
何処に仕舞ったんだったかしら?
確か、あの時お祖母ちゃんが帰ってから、何処に保管しようか考えて……。
ふと視界の隅に入った、臙脂色の風呂敷包み。
狭い納戸の、右端上の奥に、それは鎮座していた。
夕鈴は、そっと手に取り、その場で包みの結び目を解いた。
中には、些か黒ずんだ古い木の箱。夕鈴の両手に収まるくらいの大きさだ。
夕鈴はその場で蓋は開けず、また風呂敷を被せ、居間に戻った。


「黎翔さん、お待たせしました」
夕鈴が居間に入って声を掛けると、棚の前に立っていた黎翔が、ぱっと振り向いた。
じっと座って居られなかったのだろう。
どうやら、写真立てを見ていたようだ。
「手間を掛けさせてごめんね」
気が逸っているだろうに、夕鈴への労いは忘れない。
「いいえ、結構直ぐに見つかりました。多分、これだと思います。確認して下さいますか?」
再びソファに促し、夕鈴は手にした木箱をそっとテーブルの上に置いた。
「…開けても?」
黎翔の問いに、ゆっくりと頷く。

そっと開けられた箱の中には、黎翔の片手に収まる程の、四角い物体が入っていた。
摘みを倒すことで、オンとオフに切り替わるようだ。
「「……………」」
二人とも、無言でじっと見てしまう。
果たして、これで呪いが解けるのか…。
何やら頼りない気がするが、書付の通りのものが、実際出てきたのだ。
「…まあ、試してみない事には、分からないか……」
ぼそっと黎翔が呟く。
「そうですね。今すぐ、やってみますか?」
「いや、これは呪いが発動している時じゃないと、意味が無いから、日が暮れるのを待つしかないな。
夕鈴、何度も悪いけど、もう一度、僕のマンションに来てくれる?」
「はい!こうなったら、最後まで見届けます!」
こうして二人は再び黎翔の部屋まで行く事になった。
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