スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】21 さくらぱんcolor

床下探索脱出中

「Σ…あがっ!
蜘蛛の巣っ!」

無駄にデカいだけの屋敷ね…
ここ何処よ…

……っ!


結構、腰にくるわねー
いい加減、外に、出ようかしら…

……(-_-#)フンッ!

薄暗い床下で、ぶつくさと悪態を付きながら
遠くの明かりを目指し、移動するのだった。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】22 さきcolor

「―――几鍔!!」
「―――あ?」

几鍔に追いついた夕鈴は、すぐに几鍔の前に回り込む。
先ほどまで言い争いをしていた几鍔は、溜息を吐く。

「―――何だよ?」
「おばば様がいないって、本当なの?!」
「―――?!どこでそれを知った?!」
「今聞いたのよ!それで、本当なの?!」

あのおばば様がもしも誘拐されたなら…
下町の商店は大変なことになるに違いない。
何故なら、この下町の商いを牛耳っているのは、おばば様と言っても過言ではないのだ。
そんな大きな存在が一月も居ないなど、さぞ大変な事態に違いない。
一体誰が…いや、それよりも。

「もしかして、その誘拐犯に、脅されて…?」
「っ!」
「そうなのね?!」

きっと妃を誘拐しないと、おばば様の命は無いとか言われたんだ。
そういう理由なら、この几鍔が妃誘拐に手を出したとしても不思議じゃない。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】23 さくらぱんcolor

「おっ…
おまえ、とりあえず手を離せっ!
苦しい…」

「あっ…ゴメン。
つい……」

いつの間にか、几鍔の胸ぐらを掴み
締め上げてた。

「…興奮しすぎだ!
バカ女!」

「なんですって!
人が、 心配してるのにっ!」

「だから、おまえは首を突っ込むな!
コレは、俺の問題だ!」

「何、言ってんの?」

「私は、あんた達に誘拐されたのよ!
私の問題でもあるわ!」

「あんたが、イヤだと言っても、
私は、首を突っ込まさせてもらうわ!!!」

「だから、お前はバカなんだ……」

「バカってなによ!
さっきから、黙って聞いてれば、バカバカって!」

「で……結局、おばば様は無事なの?」

「……本気か!?」

「ヤラレっぱなしは、イヤなのよ!」

「バカ女っ!
教えてやんねー」

そう言った几鍔は、ひらひらと片手をふりながら帰っていった。

「教えなさいよ!
一人で調べるわよ!」

「勝手に、しろよ!
俺の邪魔だけは、すんなよ!」

相変わらず、ヤな奴。

結局、何も収穫はなくて……

夕鈴は、

“絶対に自分で解決してやるんだからぁぁ~”

沈む夕日に、決意するのだった。


1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】24 さきcolor

【幕間・王宮SIDE】


「―――何?几家の女主人が?」

黎翔は浩大の報告に安堵したと同時に無性に腹立たしさを覚えた。
浩大曰く、夕鈴はこの件を自分で解決させるらしい…
こちらは相当心配したというのに、夕鈴は自分を大切にしようとしない。
そんな夕鈴の行動に、黎翔は腹立たしさを感じたのだ。
しかし、次の浩大の報告に、何だか納得もしてしまった。

―――几家の女主人の、失踪。
あの強烈な女傑のことだ。利の絡まぬことには手を出さないだろう。
出すにしても、家族に所在くらい伝える筈だ。
それがないとなると…なるほど、そう言う事だ。
しかも、実際に夕鈴の幼馴染の金貸し君がそう認めたらしいし。
そんな状況を、夕鈴が放っておくはずがない。

「―――自分が攫われたというのに…」
「ソレ、お妃ちゃんの頭の中にもう無いんじゃねーノ?」

良くも悪くも、お妃ちゃんは一直線だ。
こうなった経緯とか自分がされたこととか、きっとそういうのは関係ねぇんだろうな。
ただ、幼馴染の危機だと思ったから、黙っていられないと思っただけで。

「ホントに、面白い娘だよ、お妃ちゃんは」
「――浩大。李順に伝言を」
「ハイヨー」

ガタリと椅子から立ってそれだけを言うと、黎翔は部屋を後にする。
言わなくても分かる。
浩大は国王側近に陛下の『伝言』を伝えるために、天井から移動を始めた。


・・・続く

 続きを読む 

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】25 さくらぱんcolor

夕鈴の下町での聞き込みは、あまり芳しくなく
だらだらと時間ばかりが過ぎていった。

いつの間にか、聞き込みは町外れの方まで足を伸ばしていた。
この辺りは、あまり治安がよくなくて……
確か几鍔も手を焼いていたはず…
ふと気付けば、人も途絶えていて……

いくら鈍い夕鈴でも、さすがに身の危険を、感じて
踵を返して、来た道を戻ろうとしたとき・・・・
いつの間にか、柄の悪そうなごろつきに囲まれていた。

「なっ…なによ。
あんた達。
そこどいてちょうだい!!」

「あいにくと、あんたに用があってな。
最近、几家の女主人をかぎまわってる小娘って、あんただろ。」

「それが、どうしたのよ。」

「目障りなんだよ。
ちょっと、こっちへ来てもらおうか。」

「いやよ。
大人しくついていくと思ってんの?
大声だすわよ。」

「無駄だよ。
このあたりは、俺らの縄張りだ。
ダレも助けは来ないさ。」

「~そう?
嫌がる女の子を、無理やり連れて行くのは、よくないなぁ~~」

えっ!?

ごろつき共の垣根から、ひょっこり現れた人物に、夕鈴は目を疑った。
ここにいるはずのない良く見知った人物だったから……

にこやかなその人物は、慌てる様子も無く
ゆっくりとこちらへと近付いてくる。

「へ・・・・李翔さん!?」

「大丈夫、夕鈴?


ねぇ……
その娘、返してくれない?
僕の大事な娘なんだよね~~」

穏やかに笑っているはずなのに、その場に居る誰もの背筋が凍りつきそうになった。

“冷酷非情の狼陛下”

我が国に、君臨する国王陛下が、こんなところに居るはずがない。
立ち上る冷たいオーラに、 その場の誰もに戦慄が走った。

「なんだ・・・・こいつは!?」

夕鈴を取り巻いていた、ごろつきは一人。
また一人と倒されていった。

スローモーションのような出来事に、夕鈴は固唾を呑んで
彼を待った。

「・・・・李翔さん!?」

陛下……怒ってる!?
蒸し暑い街角で、この周囲だけ気温が急激に下がった気がした。

……続く

 続きを読む 

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】26 ひしょきらcolor

ごろつき達がのびているのを一瞥して確認した黎翔は、
立ちすくむ夕鈴の前へと歩を進める。

「夕鈴・・・・・・」

―――やばい、怒ってる!!!
先刻ほどではないものの未だ冷気を含んでいる黎翔の声に、
夕鈴は思わず身をこわばらせた。

「ち、ち、違うんですっ!!い・・・家出とかでは決してなくっ!
 と言うか正直、私自身もよく状況が飲み込めてなくて・・・っ」
夕鈴は大慌てでブンブンと両手を振り、何とか現状を説明しようと
思いついた言葉をとにかく無造作に並べたてる。

しかし。

ふわり。懐かしい匂いと温かさが、自分を包み込む。
気がつくと、夕鈴は黎翔に抱き竦められていた。

「―――あぁ、大体の話は浩大から聞いた。
 また君を怖い目に遭わせてしまったな・・・すまない。」
「陛下・・・ごめんなさい・・・」
夕鈴は思わず、黎翔の衣をギュッと握りしめた。

心配と迷惑をかけてしまった、という申し訳なさと、
家出じゃないと分かって貰えていた事への安堵、
そして、何日かぶりに大好きな人に会えた嬉しさ。
それらが大粒の涙となり、夕鈴の瞳からポロリと零れ落ちた。


--------------------


「―――さて、と」
夕鈴が落ち着いた頃合を見計らい、黎翔はひょいと夕鈴を抱き上げた。

「ちょっ、へ・・・李翔さんっ!?!?」
「それじゃ、帰ろっか♪」

先程までの、誰もが圧倒された冷気は跡形もない。
むしろ、そろそろ耳と尻尾が見えそうな勢いだ。
黎翔が浩大から李順へと伝えさせた『伝言』。
それは、『妃を迎えに行ってくる』という事だった。

「ちょ、ちょっと待って下さい!
 私まだやらなきゃいけない事が・・・!!」
「え~、君がやらなきゃいけない事?
 早く王宮に戻って僕を安心させる事に決まってるよね♪」

夕鈴は、何とか降ろしてもらおうとジタバタもがくが、
黎翔はまったくお構いなしだ。
―――どうしよう、このままじゃおばば様が・・・!!


その時、黎翔の足がピタリと止まった。
「・・・あれ?李翔さん?」
ただし、その両腕は夕鈴をしっかりと支えたままで
降ろしてもらえそうにはなかったが。

「―――ったく、町外れの方に歩いて行ったと聞いたから
 様子見に来てみたら・・・何やってんだ、お前。」
「き、几鍔・・・」

黎翔の視線の先に目を向けると、聞き覚えのありすぎる声。
そこには、腕を組んで憮然とした表情の几鍔が仁王立ちしていた。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】27 さくらぱんcolor

「通りで、いちゃつく馬鹿ップルがっ」

「馬鹿ップルって……
この人は、上司よ。ジョウシッ
そんなんじゃないわ。」

「そもそも付き合ってなんかいないわっ「ゆーりんっ、ヒドいっ」」

「ですから李翔さん、おろしてくださいっ!「やだっ!」
やだって……なんでぇ?」

「ゆーりん、下ろしたら
また、僕の前から居なくなるでしょ!?
だから、ヤダ!」

また痴話喧嘩とおぼしき口論を始めた二人に…・・・

「あ゛ーーーーっ」

几鍔は、めんどくさそうに、ガリガリと頭を掻いた。

「あんた、ソイツ嫌がってるから
とりあえず下ろしてやれよ」

「俺もアンタにちょうど話があったんだ……
ソイツを下ろさないと、ゆっくりと話も出来ない。」

その言葉に、李翔さんは、しぶしぶ私を下ろしてくれた。
李翔さんは、まだ不満そうな顔をしてたけど・・・

まだ、私は王宮に帰るわけにはいかないのよ。
あのままだったら、連れ戻されていたわ。

ふだんは、憎たらしいくらい嫌な奴だけど・・・
この時ばかりは、助け舟を出してくれた幼馴染とその子分に感謝していた。

「李翔さん、ごめんなさい
……かならず、帰りますから」

「……ぁ、ゆーりん!
待って」

地に足がついたと同時に、小さく李翔さんに謝ると
私は、几鍔の脇をすり抜けてもと来た道を走っていった。

この場を、几鍔に任せて…

「几鍔
あとは、よろしく……」

すれ違いざま……
小さく囁かれた幼馴染の言葉に、几鍔は小さく舌打ちをした。

「金貸しくんだっけ?
できるなら、穏便に済ませたい。
そこを、退いてくれないか?」

ゆらり……
夕鈴が居なくなってから、穏やかな雰囲気はどこへやら
冷たい刃を向けられたような緊張感。
冷たい冷汗が、背中を流れる。

(だから、コイツは胡散臭さすぎんだよ。
信用ならねぇ……特に、女の前でコロコロ変わる奴は)

長年、大店を切り盛りしてきた勘が告げる。
……コイツは、敵にすると厄介な奴だって。

それでも、几鍔は聞かなくてはならなかった。
夕鈴の上司だと名乗るコイツに
何故あの高貴な場所に幼馴染が居たのかを。
この危ないバイトを今すぐに、辞めさせなくては……
また、あの馬鹿は、胡散臭いコイツの元で働かなくてはならない。

「あ゛ーーーっ!
めんどくせぇ……」

柄じゃねぇつーの。
だけど、アイツは、俺のシマのガキだしな。

俺が、巻き込んじまった…責任もあるし・・・・

「……えーーと。
李翔さんだっけ、アイツの上司の。」

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】28 さくらぱんcolor

どんどん、この場の緊張感が増していく。
几鍔は、冷たい汗が、背中に伝うのが分かった。

「そこをどけ!
私の邪魔をするな!」

陽炎がユラメク……

……面倒だな。
(コイツ……いつも、こうなのか?)
普段の余裕ぶったへらへらした感じではなく、明らかに余裕の無い様子の李翔に、几鍔はたじろいだ。


「――――っ!」

夕鈴が、居なくなった途端に、不機嫌さを隠そうともせず……
彼女をまだ追うとする李翔の行く先を几鍔は、塞いだ。

“そこをどけ”と、
冷たい獣じみた笑いを刻む李翔に、几鍔は自分の勘が正しいことを知る。

“コイツは、胡散臭さ過ぎる”

まだ日が沈むには高く、夜になってなどいないのに……
急速に周囲が凍りつくように、肌寒くなっていった。

すべては、李翔のせいだった。

……ヤバいな。

下手な質問は、こちらが抜刀されそうな雰囲気だった。
王宮掃除婦の上司?とはいえ、帯刀しているからには、それなりに剣の心得はあるのだろう。

しかし、この殺気。
本当に、ただの管理職なのか?

俺たちに、正体を偽っている?
――――何のために?
夕鈴が、妃の身代わりの仕事と何か関係あるのか?

浮かぶ疑問は、目の前の剣呑さに霧散していく。
知りたいことは、山ほどある。
だが、この男は、素直に応えるだろうか?


とても短い時間なのに、なんだか凄く長い時間睨み合っていたような……
几鍔には、分らないことが多すぎた。

王宮での謀など、知りたくも無いし、知らなくても良かった。
だが、それが身内が絡むことなら、また話は別だった。
何も知らず、踊らされている自分に腹が立っていた。
知らなくてはならない何か。
まだ糸口さえ見つからないこの事件の謎。

それは、なぜか目の前のこの男が握っているような気がした。

……ここは、単刀直入に聞いてみるか。
几鍔は、李翔に対し腹をくくった。






*****




「李翔さんでしたよね。
アイツ(夕鈴)に何をさせてんですか?」

「――――何を知っている?」

「夕鈴から、聞きました。
王宮に居る本物のお妃の身替わりだって……
そんなヤバい仕事なら、下町に返してくれませんか?」

「一応、アイツは俺のシマのガキなんです。
アイツには、大事な家族が居る。」

「アイツには、弟や父親。
家族が居るんです。」

「よく知っているよ。
彼女が大事にしているものを。

――夕鈴が辞めたいとそう言ったのか?」

「いいえ。
アイツは、俺の話なんて聞いちゃいねえ……
辞めるどころか、王宮に戻りたいとさえ言いやがった」

「それどころか変な正義感で、
俺の邪魔をするし……」


……続く

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】29 さくらぱんcolor

「金貸しくんの邪魔?

……ああ、そういえば」

「金貸しくん。
王宮で行方不明になった夕鈴が、
ココ(下町)に居る説明をしてくれないかな?」

今まで、几鍔など眼中に無かったといった風に、
李翔は初めて几鍔に興味をしめした。

「几家の女家長が、行方不明と聞いてる。
……もしかして几家は、脅されたか?」

「王宮に信用ある几商店が、
(王宮)御用達の資格を剥奪されかねない大問題だね。」

「~~~~っ。
オイ、何が言いたい」

「王宮の禁域と言われる場所から、夕鈴が消えた
君たちが、実行犯なのだろう?」

「こうも鮮やかに、夕鈴を連れ去って……
まさか、下町に居たとは私も驚いたよ」

「王の妃が住む禁域から、
彼女が連れ出されたこと、君が思うより罪が重いってこと知ってるか」

「夕鈴が、報告したんですか?」

「いや……彼女からは、何も聞いていない。
私を頼らないところは、夕鈴らしいが……」

「我々がどれだけ心配したのかを
彼女は分っていない。
早く王宮に、連れ戻さないと……」

「でも、金貸しくん。
いろいろと調べはついている。」

「この事件、几商店が絡んでいると
報告は聞いた」

「私の協力をしてくれれば、悪いようにはしない。
協力してくれれば……この件に几商店が係わったという事実は、私の胸にしまおう。

几家を脅している奴は、誰だ?」

静かな語り口だが……否やを言わせぬ物言い。

「あんた、いったい誰なんだ?
本当にただの役人なのか?」

底の知れない情報力と分析力で、
すでに几家は王宮から目を付けられていることを几鍔は知った。

「王宮としても、禁域で誘拐事件が起こった醜聞など知られたくない。
この件は、穏便に済ませたいんだ」

几鍔の質問には応えず……冷酷無比な赤い瞳が、几鍔を見据えた。

まるで、蛇に睨まれた蛙の気分。
――最悪だった。

こちらの質問は一切通らず、一方的に筋書きがもう出来ていた。

“王宮御用達の店の誇り”が、几商店にまだあるならば……“協力してほしい”
柔らかな物言いながら否やは言わせない、こちらは素直に応えるしかない。

几鍔に、考える時間は必要無かった。
ただ、素直にコイツに返事が出来なかった。

「アイツは、やっぱり本物のお妃さまの身替わりの仕事をしているんですか?」
「知ったからには、アイツはこの仕事を辞めさせます」

「彼女は、王宮に連れ帰す。
もう王宮に無くてはならない存在だ。
王宮に返してもらう」

「その為には、この事件を解決しなければ、夕鈴は帰らない。
わざわざ自分から危険に飛び込んでいくような娘だ」

「君にしたって、幼なじみを危険な目にあわせたくはないだろう?
夕鈴の幼馴染だから、協力すれば見逃してやる。
そちらにとって、悪い取引では無いと思うが……」

冷ややかな雰囲気を纏いつつ、李翔は譲らない。
こちらも譲る気はなかった。

“夕鈴を王宮に戻したくない”

几鍔は、禁域から夕鈴を連れ出した後ろめたさもあり、強く言えない。
…でも当初の予定と狂い“狼陛下の唯一無二の妃”ではなく“自分の幼なじみの夕鈴”を下町に連れ戻しただけだ…

何故こんなにもコイツは、夕鈴にこだわるのだろうか?
夕鈴が、無くてはならない存在?
幾らでも換えのきく、ただの掃除婦だろう?
本物のお妃様じゃあるまいし。

――アイツは俺に、本物のお妃の身替わりだと言ったんだ。
アイツが俺に嘘なんてつかねえ……
俺は、それを信じる。

こんな奴を信じて、王宮に連れ戻されたら
またアイツは俺の目の届かないところへ、行っちまう。

アイツは、俺が面倒みないと……
正義感が強くて
馬鹿みたいにお人よしで
自分のことより、他人のことに心砕いて……

自分だって、大変なのによ!
さっぱり俺の言うことを聞きやしない。
今だって……


キッ……と、片目だけの薄茶の瞳で、目の前の李翔を睨みつけた。

コイツは、はじめから気に入らねえんだよ。
いちいち夕鈴の奴、コイツを庇いやがって……

貴族なんかが、アイツをまともに相手するかって……

……馬鹿な女だよな。
結局、痛い目に遭わないと分からないらしい。

傷が浅いうちに、オレがなんとかしてやんないと……
几鍔は、瞑目すると…あきらめたような重い溜め息を吐き出した。

「オイ、金貸しくん。
聞いてる?」

物腰は柔らかく…
しかし、意志を曲げることを知らない“李翔”と名乗る男の言葉が、几鍔の癇にいちいち気に障る。

几鍔は、目の前のコイツのことが大嫌いだった。

……続く

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】30 さくらぱんcolor

夕鈴は、李翔から逃げるように、人通りの多い大通りに戻るべく、
手近な角を一つ曲がった。
この辺りは、先ほどより治安が良く、大きなお屋敷も多い。

現に、夕鈴の両脇には一続きの高い漆喰の壁が続いていた。
青空を覆うような立派な松の木が、塀から太い枝を伸ばし
通りに涼やかな木陰を作っていた。
相変わらず人は見当たらないが、貴族の屋敷が続く通りなど、何処もこんなものだろう。
閑静な通りに来て夕鈴は、ようやく安堵し、疲れを覚えた。

走ってきた脚を止めて、ふと振り向くと……
もう李翔さんと几鍔の二人の姿はココから見えなかった。

夕鈴は、来た方向に向かい、深々と頭を垂れた。
もう見えない李翔(陛下)に向って。

本当に心配かけたのだろう。
私を見つけて、すぐ抱き締めてくれた。

長いこと会えなかったかのように、懐かしさまで覚えた真摯な赤い瞳。
少しやつれた気がしたのは、気のせいではないよね。

……それでも、私はあの場から逃げた。
今、王宮に帰るわけにはいかなかったから。

夕鈴の両目から大粒の泪が零れ落ちた。

――陛下、ごめんなさい。
せっかく迎えに来てくれたのに――

王宮に戻ったら、狼陛下の花嫁を狙う、私の火の粉は払えない。
絶対に黒幕を見つけて帰るから。

そして必ず陛下の下へ帰るから……
だから・・・・待っててください。

ぼろぼろと……夕鈴は溢れる涙を止められず……
頭を垂れたまま、そこを動けなかった。

――――いや動けずにいるのだった。

*****



ーーわたし、何やってんのよ!

夕鈴は、俯いていた顔を上げて
袖口で、ぐいっと零れる涙を拭いた。

ーーこんな弱気じゃ、黒幕なんて突き止められないじゃない!
まだ私は、何も突き止めていないのに。

おばば様の行方も。
几鍔を脅した人物も。
狼陛下の花嫁を狙うこの計画の黒幕も、その狙いも。

「よぉしっ!
頑張るぞ!」

“パチーーーンっっっ!”

突然、静かな通りに響いた乾いた音。

夕鈴は、大きな気合の掛け声と共に、自分の両頬を
おもいっきり叩いた。

ジンジン……と、夕鈴の両頬が痛む。
叩いたせいで 赤くなった頬。
痛みのせいで少し涙が出た。

だけど、それは先ほどまでの苦しい涙じゃなかった。
夕鈴のハシバミ色の瞳には、涙の代わりに強い決意が宿っていた。

“いつも、どんな時も“花嫁”は、陛下の味方です”

昔、陛下と交わした約束が、ふいに頭に蘇る。
離れている今も私は、あなたの味方です。

また陛下の顔が浮かんで、苦しい涙がまた零れそうになった。
夕鈴は、今度は俯く代わりに、涙が 零れないように空を見上げた。

ーー青空に陛下の笑顔が、浮かんで消えた。
ツン……と鼻の奥が痛くなる。

見上げた空は、何処までも澄んで青く眩しかった。
眩しい太陽が、夕鈴の頭上に輝いていた。

ーー大丈夫。
きっと、うまくいく……

夕鈴は、なんだか不思議と勇気が湧いてくるのだった。



……続く

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

1 本誌沿い 狼陛下の花嫁 誘拐事件

IF【臨時花嫁】31 沙希color  

【幕間・李翔SIDE】



夕鈴がいなくなった瞬間の恐怖を、私はうまく言葉にできない。

見つけたと思えば、夕鈴はまた、すぐに私の腕からすり抜けていった。

“ごめんなさい”

そう呟いた夕鈴の声が、私の中で何度も繰り返される。

残された私の前には、君の幼なじみの彼。

夕鈴が彼に「よろしく」という声は、私の耳にもはっきりと届いていた。

それだけでギリギリと全身が苛ついて、思わず剣に手をかけてしまう。

なんで私をもっと頼ってくれないんだ。
夕鈴にとって、私はその程度の存在なのか?
信用できない?

ーーそんなはずはない。
私はずっと夕鈴のことを守ってきたし助けてきたはずだ。

夕鈴には、人に頼るという発想がない。
だから、自分は頼られない。

でも、ソレがわかったところで、私の気持ちが落ち着くわけではなかった。



まあ、傷ついた様子がなくて、何よりか……。

夕鈴がちゃんと生きて、下町にいる。

まずは、そのことを喜んで。
次には君を、迎えに行こう。

帰ったらお仕置きだから。
ね。ゆーりん?
覚悟しておいて。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

momo苺

Author:momo苺
こちらは白陽国SNS地区のコミュニティ・ログ倉庫です。

momo苺は、このログ倉庫の架空番人です。
コミュの某所にて、メンバーと呟いています。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

04月 | 2017年05月 | 06月
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -


目次
表示中の記事
検索フォーム
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
634位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
二次小説
289位
アクセスランキングを見る>>
カウンター
現在の閲覧者数:
marble-color
こちらは、リンクフリーです。
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。